Some Were Born To Sing The Blues

Saxとジャズ、ピアノとブルース、ドラムとロックが好きなオッサンの日々の呟き

2024年、元日は三島で富士山を眺める

2023年最後の夜は、熱海で過ごすことになっていた。
ここ数年、年末年始は温泉宿に泊まって、ゆっくりと過ごすのが定例となっている。そもそもの切っ掛けは、2020年に海外旅行に行けなかったことに端を発している。
2020年、俺は東京のボロアパートで単身赴任状態。相方は札幌で独り暮らし。2020年の10月にそれぞれ東京、札幌から神奈川へ引越。2つの拠点から1つの場所への引越を行う必要があった。とても海外旅行などをしている金銭的、時間的余裕はない。尤も、この年はコロナの影響もあって、引越がなくても海外旅行は無理だった。

相方が色々な意味で精神的にストレスを溜め込んでいたのは判っていた。たった1人、札幌で1年暮らしていたのだ。海外旅行の代替という意味で「年末に温泉旅行でもしようか」と水を向けると相方は乗って来た。前々から「お正月に料理作るの、嫌だなー」と相方は愚痴っていた。その程度の女房孝行はしてやらなくてはなるまい。それが年末年始の温泉旅行の始まりである。

そして、一昨年にシンガポール、去年はベトナムと海外旅行もまた行けるようになった。となれば年末年始の温泉旅行はする必要がない。というか、海外旅行に行って、さらに温泉旅行も行くというのは分不相応である。というか贅沢である。だが、人間は一度贅沢を覚えると、それを忘れることが出来ない。海外旅行も計画し、年末年始の温泉旅行も実施するのが当たり前になっていた。相方がそれらを計画するのに何の躊躇いも覚えないようになっていった。盗人猛々しいとはこのことである(ちょっと意味が違う)。
仕方あるまい。海外旅行も温泉旅行も、いつまでも行けるものでもない。俺達の経済的理由や体力的要素で永遠に続けられるものでないのも、これまた明白。となれば、行ける間は行かせてやろう、そう腹を括った。

今回、相方は熱海を選択。温泉旅行に関しては(関しても、と言うべきか)、全て相方が旅行先を選ぶ。熱海は以前も行ったが、場所はどこでも良いのだ。広い温泉に入り、食事はホテルが準備してくれ、後はゆっくりのんびり過ごす。それで良いのである。
大晦日に熱海まで行く電車は混んでいて、特急は席が取れない。というよりも、電車のことを俺達は完全に失念していた。当日の朝になって「電車どうしようか?」という有様。
川崎から熱海までは各駅停車で1時間20分程度で行ける。昼前に家を出て、まずは横浜でランチ。どこの店も混んでいる。沖縄料理店が並ばずに入れるということで、2023年最後のランチは沖縄料理を選択。俺は、そーきそば、相方はゴーヤチャンプル定食。

横浜から各駅停車で熱海まで。運良く2人とも座ることが出来たが、1時間以上座りっぱなしなので、尻が痛くなる。立っているよりはマシか。

熱海駅前は、大量の観光客で溢れている。熱海は随分前に一旦寂れたのだが、また復活している気がする。どこかの大手ベンチャーのテコ入れでもあったのだろうか。

駅前の商店街に寿司屋がある。明日(元日)ここが営業していれば、ランチを摂るのだが、多分やっていないだろう。そうなると、ホテルの朝食を摂るしかない。ホテルの朝食はビュッフェなので味は期待出来ない。

だが最近は元日はやっていない飲食店が圧倒的に多い。相方が「ホテルの朝食で我慢しろってことだね」と諦観している。

相方が海沿いを歩きながらホテルまで行こうというので、ぶらぶらと散歩しながらホテルを目指す。いわゆる「金色夜叉」のモデルとなっている「お宮の松」がある。相方が「お宮の松って何?」と問うので「あれだ。別れろ、切れろは芸者の時に言う言葉って奴だな」と答える。相方は知らなかった模様。俺もよく判ってないんだけど。

10分程、のんびりと歩きながらホテルに到着。ホテルは特にこれと言って何か特色がある訳でもない。だが、一泊の温泉宿、それほどのものは求めていない。

部屋に入り、大晦日のテレビを適当に見ながら、スマホを弄る。俺はスマホ依存症ではないと自分では思っているのだが、現代に生きていると、否応なしにスマホに付き合わざるを得ないのだなあと実感する。

本当はスマホなんか見ずに、池波正太郎の時代小説辺りを大晦日に読むほうが粋だと思うのだが、こればかりは仕方ない。
遅くにチェックインしたので、晩御飯の時間が20:30からしか空いていなかった。夕食、朝食ともにビュッフェスタイルである。19時近くになったので、まずは食事前に温泉だ。
このホテルの売りが300人入れるローマ風呂だと言う。何がローマ風呂なのかよく判らない。尤も20時まではローマ風呂は女性専用になっている。相方はローマ風呂に入りに行った。俺は別の風呂に入る。こちらは狭くて洗い場も10人程度しかなく、脱衣所も狭い。
温泉は温めで温泉の質も悪くはなかったのだが、いかんせん狭すぎた。急いで身体を洗い、適当に温まって出る。というのも部屋の鍵が1つしかないので、俺が先に部屋に戻ることになっていたのだ。また急いだ理由は、風呂を出て、自動販売機でビールを購入してこっそり飲もうというミッションがあったからである。

20時半になり、食堂へと向かう。ビュッフェスタイルなのは良いが、「席も自由席です」と完全放置プレイ。まずは空いている席を探さなくてはいけない。このシステムは正直どうかと思う。食べ終わった席の残骸は放置されたままで、空いている席があまりない。ホテルのビュッフェ運用が今一つだなあ。料理も正直あまり大したものがない。過去に泊まった温泉宿は殆どがビュッフェだったが、料理も従業員のサービスも各段に良かったぞ。

取り合えず、料理と烏龍茶を取ってテーブルに戻ると相方が「お酒飲もうか」と言う。基本的に、相方と一緒の時は禁酒命令が出されているのだが、年末年始の温泉旅行の夜と俺の誕生日だけはアルコールの許可が下りる。
このホテル、アルコールも飲み放題だった。ビュッフェ式のホテルでもアルコールは別料金のところが多いが、ここはビール、焼酎、日本酒、なんでもOKである。
相方から「ほどほどにね」と釘を刺される。最初の1杯はビール、2杯目は焼酎の水割り。ここはアルコールコーナーに一升瓶がどんと置いてあり、自分で濃さを調整出来る。当然グラスの9分目程度まで焼酎を入れる。ほぼストレートな水割り。3杯目も同様。さすがに相方が許してくれるのはここまでだろう。4杯目は諦めた。
料理に関しては、正直「美味しくなかった」というか「不味かった」という残念な結果に終わった。味覚音痴の俺ですら「今一つだなぁ…」という感想以外出てこない。相方が「アルコール飲み放題だから、料理がイケてないのかな?」と言う。アルコール飲み放題だから料理が駄目なのか、料理のレベルが落ちるから、それをアルコール飲み放題でカバーしようというのか。鶏が先か卵が先か。

食事を終えて、その後は俺はローマ風呂に入りに行く。身体は先程の風呂で洗ったから、今回はサウナと水風呂中心。よくサウナ好きの人が「整う」と言うけれど、俺はそれには懐疑的だ。サウナで熱さを我慢し、その後の水風呂。俺も気持ち良いと思うし、このサウナと水風呂のコンボは好きだ。でも、これ絶対に心臓に悪いと思うんだけど。
風呂を終え、ロビーでまたまたビールを飲む。今回はホテルのロビーにアルコールの自動販売機があり、そこでビールを買って飲めたので、そこは非常に良かった。というか、このホテルの良い点はそれくらいかな。
部屋に戻り、相方とテレビを見ているうちに、零時を回った。お互いに「本年もよろしく」と挨拶。去年は見知らぬおじさんと2人きりで、サウナ室にて新年を迎えたのであった。というか、もうあれから1年か。時が過ぎるのは早い。

朝起きると、相方が「露天風呂に行きたい」と言う。露天風呂は男女それぞれにあるので、俺も露天風呂に入りに行く。ここがまた脱衣場も露天風呂も狭くて、15分程度で上がる。部屋の前で相方が待っている。

「随分早いね」と驚いていると、「脱衣所も狭いし、風呂も狭くて、全然駄目だったから、早々に出て来た」とのこと。うーむ。露天風呂は男女ともに駄目のようである。

朝食に向かう。昨日の夜と同じでまたまた運営がイケてなくて、テーブル探しに一苦労。食事はさらにパワーダウンしており、2024年の最初の食事がこれかとがっかりする。
俺は食い物には拘りがない人間だとずっと思ってきたけれども、やはり食事が美味しくないと、楽しくないのだということに今更気付く。

相方に「ホテルのランク(料金)を上げれば、サービスや食事も必然的に良くなるんだよな。来年はちょっとランク上にしようよ」と提案する。相方も頷いていた。今回のホテルは、17,000円程度(1人分)だからな。この料金で文句を言ってはいけないのだろう。
食事を終えて、またまた俺はローマ風呂に入る。さすがに昨日今日で4回目の入浴なので、風呂疲れした。何事も程々が大事だ。

俺達の元日のミッションは「初富士山を見ること」である。これのみに尽きる。というか、相方は富士山大好きっ子なのである。
「熱海からだと富士山見えないから、三島に行こう。あと三島には日本一の巨大吊橋があるんだよ。それ歩こうよ。大丈夫?」と訊いてくる。俺は高所恐怖症だから、吊橋なんて「御免被る」の人だ。だが、せっかくここまで来たら、そういったチャレンジも必要だろう。チェックアウト後は、また熱海の駅までのんびりと散歩しながらである。ゆるりと過ごせて良い気分だ。

元日から、海辺で戯れる人多数。これもまた良きことである。

熱海駅前に到着して、「熱海プリン」を購入しようと思ったが、お昼近くで行列がいかんともし難いことになっている。ここは諦める。

電車で三島まで移動。そこからバスで三島スカイウォークまで。田舎の路線バスは料金が変動制なので、たまに驚く。首都圏だと、路線バスは220円くらいの固定制だからね。今回は三島駅からスカイウォークまで710円である。バスの料金か、これが?

スカイウォークに到着し、巨大吊橋を渡ることにする。ちょうど吊橋の前の広場から富士山が見える。今年、初富士である。それにしても、2021年以来、ずっと元日には富士山を見ていることになる。

相方は富士山を見てご満悦の様子。

吊橋は結構揺れるのだが、富士山を見ながら歩いていると、それほどの恐怖でもない。

富士山を堪能して、俺達はバスで三島駅に戻ることにする。
途中、バスが渋滞に巻き込まれ、全然進まなくなった。三島大社の停留所で相方が「降りよう!」と言い出す。初詣したくなったのかと訊くと「バスが渋滞で動かないし、車内は混んでるしで気持ち悪いから、歩こうよ。駅まで10分くらいだし」と言う。

気温も高く、歩くにはもってこいの気候だ。元日とは思えない暖かさ。歩いていると富士が目に入る。
「いいなあー、ここに住んでる人は毎日富士山が見られるんだよー」相方は羨ましがっている。ここまで富士山が好きな人を俺は相方以外に知らない。

さすがに歩き疲れたので、三島駅前のTully'sで休憩。電車の時間を調べると、急行踊り子号の座席指定が取れると言う。行きは各駅停車で1時間20分だったが、急行だと1時間せずに横浜まで着ける。それに急行のほうが指定席なので、座席の質も良い。
「1,000円(急行代)余計に払うだけで、このクオリティだもんねー。何事も金だな。金で全ては買える」相方は喜んでいた。若干、間違えているような気もするが、相方は守銭奴だからしょうがないのである。

ホテルの朝食が酷かったので(俺達は朝食を食べると、まず昼食は摂らない。胃袋の余裕がないからだ)、晩御飯は横浜で食べようと決める。
牛タン屋さんが開いていたので、そこにする。相方は牛タン定食、俺はカルビ定食。それにつくねを追加注文。2人で「美味い、美味い」と喜び勇んで食べる。やはり、美味いものを喰うのは大事だな。

なんとなく2人して、不味かったホテルの朝食のマイナスを取り返した気分になっていた。
こうして俺達の恒例行事になっている年末年始の温泉旅行は無事に終了した。相変わらず温泉入って、富士山見る以外は何もしていないが、それで良いのだ。

毎年同じ事を行えるというのがどれほど有難いことかを、俺達、そして貴方達も知っているはずだ。