Some Were Born To Sing The Blues

Saxとジャズ、ピアノとブルース、ドラムとロックが好きなオッサンの日々の呟き

ロックンロールに泣かされそうになった夜~Def Leppard/Motley Crueのliveを観て来た~

11/3にデフ・レパード、モトリー・クルーのジョイントライブを見て来た。デフ・レパードは、10代の頃に偶然テレビで演奏を見掛けた。最初はピンとこなかったのだが、繰り返し聞いているうちにファンになった。
テレビ出演での演奏というのは、いわゆる「当てぶり」という奴で、裏で音源を流して演奏しているように見せかけるもの。10代の頃の俺はそんなことも知らなかった。「生演奏でどうやってフェイドアウトさせてるんだろう」とずっと不思議に思っていた。馬鹿だね。

デフ・レパードの音楽性や演奏について熱く語っても、知らない人には「ふーん」で終わる。それに俺も熱く語れる程の情報を持ち合わせていない。だが、このバンドの歴史について、ちょっと語らせて貰おう。
このバンドは、ボーカル、ギター×2、ベース、ドラムの5人編成。ロックバンドとしては割とよくある形ではある。
初代ギタリストにしてバンドの発起人のピートは、酒癖の悪さとバンドの私物化が原因でバンドを馘になる。酒癖の悪いギタリスト? どこかにもアマチュアでそんな奴がいたな。そいつは今、Saxを吹いているけれど。

そしてバンドは2代目ギタリストを入れて、アルバムは大ヒットを飛ばす。となると後はサクセスストーリーしか思い浮かばない。才能のない作家が物語を書けば、それでお話はジ・エンドである。
ところが、天の配剤はそんな夢物語を許さない。ドラマーのリック・アレンが交通事故を起こし、左腕を肩から切断する。普通に考えて隻腕でドラムが叩けるとは思えない。俺も同じドラマーの端くれなので判るが、「左腕が無かったら、スネアどうやって叩くんだよ?」となる。リック・アレンは、その後リハビリを繰り返し、特別な電子ドラムセットを利用してドラマーとして復帰する。後にバンドメンバーが「彼がギタリストだったら復活は無理だった」と語っている。確かにさすがにギターは腕一本では難しい。
リック・アレンが復活し、次のアルバムは前作を上回る大傑作アルバムとなる。もうこれ以上の話は作れまい。誰もがそう思った。

ところがさにあらん。バンドのオリジナルメンバーで、曲の大半を手掛けていたギターのスティーブ・クラークが、アルコールの過剰摂取で死亡する。
最初に馘になったピート、そして死亡したスティーブとバンドの創成期に在籍していたオリジナルギタリストが2人ともバンドからいなくなった。
ローリングストーンズも初代ギタリストにして、バンドの発起人のブライアン・ジョーンズを馘にしているが、彼らの場合はキース・リチャーズという大黒柱がずっと存在していた。デフ・レパードは、バンドの中心人物であるスティーブを失ったのだ。俺はスティーブの訃報を本屋で音楽雑誌を立ち読みして知った。あの衝撃は今でも覚えている。彼はまだ31歳の若さだった。

その後、バンドは4代目ギタリスト、ヴィヴィアン・キャンベルを迎える。そして今でもバンドは活動している。ヴィヴィアンは一時、癌になって音楽活動からは少し身を引いた状態であったらしいが、今はワールドツアーで演奏が出来るほどに復活したようだ。

バンドのライブ演奏は素晴らしく、ヒット曲満載の最高のショーだった。ライブの後半になるとステージ後ろのモニターに若き日のメンバーが映し出された。亡くなったスティーブが若きままの姿で映し出されたり、リック・アレンが両腕が揃った状態でドラムを叩いている姿があったりと、ファンにとっては涙ものの演出だった。
俺はスクリーンに映し出された彼らの姿を見ながら「ああ、もうスティーブはいないんだなぁ…リックも片腕で何十年もよくやっているよ。ヴィヴィアン、ライブ出来て良かったね」となんだか孫の成長を見守るおじいちゃんのような気分になっていた。彼らのほうが年上なんだけどね。
思わず、泣きそうになった。17歳の頃に初めてデフ・レパードを聴いて、そして40年近く彼らを応援している。これは凄いことなんじゃないかと思う。彼らも俺もさ。

デフ・レパードの出番が終わり、モトリー・クルーのライブが始まる。俺はモトリークルーは「ライブ・ワイヤー」と「ホーム・スィート・ホーム」の2曲しか知らない。だから彼らのライブに関しては、なんとなく一歩引いた感じで見ていた。それでもさすがにプロだね。充分に楽しませてくれる。モトリーは、ボーカル、ギター、ベース、ドラムの4人編成なのだが、女性コーラスが2人いて、ステージは華やかだ。女性コーラスはボンテージ衣装っていうのか、セクシーなコスチュームを身に纏っていて、見た目でも楽しませてくれた。

ライブの途中でMCの時間となり、ドラマーのトミーがステージ前方にやってきて、いきなり「ヤバイーーー」と絶叫。これには観客席も大きく反応する。これは推察だけれども「なあ、awesomeって日本語でなんて言うんだ?」とスタッフに教えて貰ったのだと思う。

awesomeの意味は、日本語で一番近いのが「すっげー」だと思う、俺の感覚だと。そういう意味では「やばい」という訳は絶妙な気がする。彼は日本には2週間前にやってきて、色々回ったと告げていた。
そして彼はシリアスになり、別の話を始めた。「悲しい話がある。俺達のツアースタッフを30年以上やってくれたペギー(ベギーかも?)が亡くなったんだ」
トミーは天井を指さして「空にいる彼にこの歌を捧げる」(だったと思う。違ったかもしれない)と言ってピアノ演奏を始めた。「ホーム・スィート・ホーム」だ。この歌は単独でも素晴らしい傑作バラードなのだが、イントロにこんな話をされたら、涙腺崩壊一歩手前だ。
まさか、モトリークルーのライブを見て泣きそうになるとは思わなかった。

デフ・レパードもモトリー・クルーも活動歴は長い。俺が10代の頃から一線で活躍している。もう40年以上の歴史があるはずだ。それだけ長く続けていれば、メンバーやスタッフが亡くなったり、思わぬ悲劇に遭遇することもある。

それでも、人は生きていかなくてはいけない。そして生きている限り、希望はあるものだ。
俺は二つのハードロックバンドから、この夜、それを学んだ。