Some Were Born To Sing The Blues

Saxとジャズ、ピアノとブルース、ドラムとロックが好きなオッサンの日々の呟き

夢ノエンアレ

10/22に、俺が通っているSax教室の発表会があった。そこで俺はPe’zの「夢ノエンアレ」という曲を演奏した。結果は無残の一言に尽きる。
いやあ、酷い演奏だった。ここ1ヶ月程、週末はカラオケボックスに行って、ひたすらその曲だけを練習していた。そして本番がここ1ヶ月の演奏で一番酷かった。無論、練習と本番で同じ精度の演奏が出来る訳がない。練習は1人、カラオケボックスで吹くだけ。だから、プレッシャーとも無縁だし、失敗しても気にならないというリラックスした状態で吹ける。本番よりも出来が良いのは当たり前とも言える。

それにしても、である。

演奏が終わって「どうしてこんなにグダグダだったのかなぁ…」と省みた。すると「本番で失敗して当然じゃん」といういくつかの要素が見つかった。
本番の演奏の酷さの言い訳を探しているだけという気もするが、せっかくなので、ここに記す。
バンドマン、或いは楽器を演奏する方なら「ああ、それは判るなぁ」となるだろうし、純粋にリスナーの立場の人は「へえ、楽器演奏って、そういう側面があるのね」程度に思っていただければ良い。

今年の3月にドラマーとしてブルースバンドでライブに出演した。8月に札幌まで出掛けて、シティポップ中心の楽曲を演奏するバンドでテナーSaxを吹いた。
そして、10月にSaxの教室の発表会でピアノ、ベース、ドラムをバックにテナーSaxを吹いた。

バンドでのライブ演奏と、発表会の演奏はどちらが難しいか。これは間違いなく、発表会である。今からその理由を説明する。発表会のほうが難しい理由が大きく3つほどある。

1.発表会はリハがない。
バンドでライブをやる場合、必ず当日にリハーサルがある。リハに充てられる時間はライブハウスによって様々だが、それでも確実に本番と同じ状況で音を出して確認することが出来る。特にバンドというものは、自分の音だけでなく、他の楽器とのボリュームバランスがあるから、事前リハでの確認は必ず行う、行える。そしてPA(各楽器のバランスを調整をしてくれる音響スタッフ)がいるので、例えば「ギターだけ異常に音がでかい」とか「ベースの音がよく聞えない」などは基本的に発生しにくい。たまにPAがヘタクソで、バランスが無茶苦茶になっている場合もあるけれど。

それに比べて、発表会は本番の一ヶ月くらい前にバックバンドのメンバー(ピアノ、ベース、ドラム)の人達と10分程度曲を合わせるだけ。これは音量のチェックとかではなく、あくまでもアレンジや曲の構成に互いに認識のズレがないか確認するもの。また、こちらはオリジナル音源に合わせて練習しているので、本番当日はバンドの演奏がこういった雰囲気になるよ、というのを事前に知っておくためのものだ。
当日は、もう本番が始まるまでバックバンドの人達と自分のSaxの音のバランスなどが判らない。ぶっつけ本番である。これは厳しい。

2.発表会は1曲しか演奏出来ない。
アマチュアバンドのライブは、だいたい持ち時間は30分前後というのが多い。ジャズだと話は変わるけれど、ポップスやロック、ブルース辺りだと、だいたい平均して6曲くらいは演奏出来る。
これはどういうことかと言うと、ライブが始まって、1曲目でバンド全体の感覚や会場の雰囲気を自分の中で消化することが出来る。だから、アイドリングみたいなものだけれども、最初の曲で徐々にエンジンを上げていき、2曲目、3曲目でフルスロットルに持っていくことが可能だ。また、6曲程度演奏するとなると、自分の中でも熱量のある曲と、この曲は良い意味で「手を抜こう(クールダウンしよう)」という区別をすることが出来る。そうすることによって、自分の中でライブの山場や波を作ることが可能なのだ。

ところが、発表会は1曲しか演奏出来ない。今回がそうだったのだけれども、演奏が始まって「あれ、思ってたのと違うな」と感じても(実際、俺は感じていた)1曲だと軌道修正が出来ない。立て直せたかなと思う頃は曲が終わっている。そして自分の出番も終わりだ。要は失敗してもリカバリーが効かない。

3.バックバンドとバンドは違う。
今回、俺のバックでピアノ、ベース、ドラムを演奏してくれたのは、いずれも音楽教室のその楽器のインストラクター。つまり音大を出ているような、楽器演奏に長けた人達である。だから上手い。ミスはないし、リズムがずれたりすることもない。ズレるのは俺のほうだ。そういう意味では安心して一緒に演奏出来る。だが、彼らと音を合わせたのは一ヶ月前のリハの10分と本番演奏の時だけ。名前も知らないし、冗談を言い合うような関係でもない。

それに比べて、ドラムを担当したブルースバンドも、札幌でSaxを吹いたシティポップバンドもどちらも仲間だ。何度も練習を一緒に重ね、時には意見を言い合って剣呑な雰囲気になったりもするが、やはり仲間である。一緒に演奏していると安心感がある。

札幌のバンドに関して言えば、俺が参加した8月のライブ、実際にメンバー全員と顔を合わせて練習したことは一度もない。前日にギター、ベースと3人で音合わせをしただけだ。だが、他のメンバーとは札幌時代に何度も一緒に顔を合わせて、練習を繰り返していた。俺が札幌にいた時は、担当がギターだったし、レパートリーも全く違っている。だが、同じスタジオに入って音を出したという共有感を持ち合わせている。それが大きい。

発表会本番では、最初の音を出した瞬間に「あ、これは違うな」と直感した。こういった勘は外れた試しがない。音も良くないし(楽器のセッティングミスだ)、ノリも悪い。運指も上手く回らずミストーンが多い。
イントロの演奏が始まって最初のフレーズでそれを俺は実感した。そして「何とか修正しようと躍起になって演奏している俺」が自分の中にいる一方で「酷い演奏だなー。グダグダじゃねーか」と演奏者の俺をディスっている観客の俺がいた。
曲の真ん中辺りまで、俺の中では「拙い演奏をなんとかしようと頑張っている演奏者の俺」VS「あまりにも酷い演奏に、奏者の俺を馬鹿にするリスナーの俺」が2人いた。途中まで完全に俺は二重人格というか、俺の中に2人の俺がいる状態だった。正直、楽器演奏をしていて、こんな状態になったのは初めてだった。

演奏中にそんな分裂状態になったことを演奏後に思い返して「俺って変わってんな…」と痛感した。他の楽器奏者もそんな感覚を持つことがあるのだろうか。
曲の後半辺りになって、だいぶに持ち直しはしたが、前半のマイナスがデカすぎた。

長々と自分の本番での失敗を書いて言い訳三昧しているだけだが、最後に演奏動画を貼っておく。演奏ミスをして、言い訳をダラダラ書くのは本当にみっともないのだが、blogに書くネタが出来たとこれまた言い訳させて貰おう。
それにこの曲は本当に大好きな曲で、演奏出来るのを楽しみにしていた。結果が伴わなかったことを一番残念に思っているのは、間違いなく俺である。いつかまた、リベンジするチャンスがあるかもしれない。
というか、いつかリベンジを果たしたい。

www.youtube.com(相方が何故かスマホを縦にして撮ったので、幅狭な動画になっている)