Some Were Born To Sing The Blues

Saxとジャズ、ピアノとブルース、ドラムとロックが好きなオッサンの日々の呟き

3回外したら、4回目を当てればいい

今年に入ってから、3連敗だ。どうも勘が働かないらしい。
何が、3連敗なのか。答えは単純で鑑賞した映画が3つ続けて詰まらなかったという話である。
「なーんだ」と言うなかれ。こちらはいずれも期待していた3作品である。まさか3連続外れクジを引くとは思ってもいなかった。

"マトリックス"が20年の歳月を経て続編を作ると知った。当時、あのガンアクションには痺れた。キアヌ演じるネオが"guns,lots of guns"と言うシーンは今見ても心が湧き立つ。人間はコンピュータシステムに取り込まれた電源供給装置であり、自分が過ごしている日々は、コンピュータの見せている幻想映像、このSF色満載のテイストも良い。
新作はネットでの評判があまり良くなかった。時間を経て作った続編は大抵期待を裏切るものだ。"ターミネーター ニュー・フェイト"も酷かった。暗殺のミッションを終えたターミネーターが人間と仲良く暮らすって、それ何かのギャグかよ? それに原題が"NEW FATE"なのに"ダーク・フェイト"とか変な邦題つけるんじゃねえよ、配給会社。
話がそれたので元に戻す。"マトリックス レザレクションズ"を観に行かないかと相方を誘う。相方は「昔のシリーズ、内容よく判んなかったんだよねー」と言う。
安心しろ、俺もよく判っていない。相方はU-NEXTで過去作品を復習したらしい。
「やっぱよく判んなかったから、私は行かない」相方はそう俺に告げた。楽しめそうもない人間を無理矢理誘っても、金と時間の無駄。それに映画代を払うのは俺。だったら、独りで観に行こう。
前の日の夜更かしが原因の一つではあったが、上映中、3回か4回寝落ちした。そのせいで流れがよく判らなくなった。だが、寝落ちしたのは寝不足だけが原因じゃない。はっきり言って話が退屈で詰まらなかった。シリーズパート1の焼き直しにしか思えない内容、物語。
アクションも弱かった。トリニティのバイク・アクションが唯一の目玉とも思えたが、それでも過去作を超える箇所が見当たらない。酷評されたのも仕方あるまいと思える作品だった。歳を取って老境に近いトリニティ(キャリー・アン・モス)が20年前と変わらぬ美貌だったのが俺にとっての収穫と言えるか。当然、キャリーは歳相応に老けてはいる。だが、俺が憧れた素敵だと思っていた彼女は健在だった。それだけでこの映画の存在意義はある。

そういえば、マトリックスパート1は、俺が映画館で2回観た唯一の映画である。当時の恋人とマトリックスを観て、数日しないうちに別れた。ムシャクシャしていた時に、たまたま別の女性とデートをする機会に遭遇した。その女性が「マトリックスを観たい」と言い出したのだ。まさか「元カノと観たから、もういい」とは言えない。
観終わった後に、その女性が「ウォーレンス・フィッシャーボーンて綺麗な英語話すよね」と言っていたのを思い出す。その人とは、パート2である"マトリックス リローデッド"も一緒に見た。その女性と観た映画はマトリックスの1、2だけだ。彼女と逢う度に酒ばかり飲んでいた。今思い返すと、もっと一緒に映画を観たり、どこかに出掛けたりすれば良かったなと思う。彼女に済まないことをした。昔の映画のことを思い出すと、こうやって昔の若かった頃の自分の思い出が自然と甦ってくる。良い事なのか、悪い事なのか、よく判らないけれども。

2番目のハズレ映画は"バイオハザード"だ。この映画は、日本のゲームが原作となっている。ミラ・ジョヴォヴィッチ主演で6作品作られた。俺は全6作、映画館で鑑賞し、全作品のDVDを持っている。ミラ版のシリーズは6作で完結した。今度はキャスト、監督を一新してリブート。俺は未だにリブートとリメイクの違いが判らない。どう違うのだろう。

この6作も、途中からは相方と観に行ったのだが、一体何作目から相方と一緒に観に行ったのかが記憶にない。そして相方と観に行く前は、誰と観に行ったのか、その辺りも怪しい。
相方に「バイオハザード、新作やるんだけど、観に行く?」と尋ねると、速攻で却下された。ま、そうだろうな。仕方がないので、また独りで観に行った。

映画に限らず、小説、絵画、音楽という絶対的正解の無いものは足し算と引き算の美学なんだな。特に愚作に遭遇するとそれがよく判る。何を描いて、何を省略するか。
訴えたいポイントはどこなのか、そこを中心に据えていかないと物語(映画)がぼやけて、何もこちらに伝わってこない。音楽や小説もそうだ。曲の最初から最後までずっと同じテンポ、同じテンションで演奏されたり、歌われたら、聴いていて飽きてくる。曲の盛り上げるべき箇所をきっちりと計算し、そこに向けて曲の流れを創り上げていく、そういったものがないとただの駄曲となる。
詰め込み過ぎれば、今度は受け取り手が消化不良を起こす。そうならないように、上手く緩急をつける。また逆に内容がスカスカだと、何も訴えるもののない映画や曲や小説が出来上がる。

ということで、バイオハザードの新作は、褒める箇所が1つもない糞映画だった。どんな映画でも、1シーンくらいは「おおっ」という場面がある。だが、この映画には1つもない。起承転結も盛り上がるクライマックスも何もない、空っぽの映画だった。
本当に久しぶりに「金と時間を無駄にした」という映画を観た。

最後は"バットマン"だ。クリストファー・ノーランの"ダークナイト"は傑作だった。それは相方と2人で随分前に観た。相方に「また、バットマンやるから観に行こうよ」と水を向ける。「面白いかなぁ。ダークナイトは面白かったからなー」と相方は三度目の正直で首を縦に振った。
オープニングから暗い雰囲気が漂い、映画全体を象徴するようなダークなグランジっぽいテンポの曲が流れる。

ネットでの評判は結構良かったようなのだが、俺は残念ながら乗れなかった。今回はジョーカーという最強のヴィラン(悪役)がいなかったせいもある。光が輝くには闇が必要という言葉の意味がよく判った。
3時間の長尺映画なのだが、今回の映画で一体何を一番伝えたいのか、それが俺にはよく判らなかった。話が冗長過ぎて、この映画もまた、訴求ポイントを探すことが出来ない。
映画館を出ると、相方が「ダークナイトのほうが面白かったなぁー」とため息をついていた。

と言うことで、今年に入ってから映画館で観た映画は全てハズレ(俺にとっては)という結果に相成った。残念だが、こればかりは仕方がない。正直、マトリックスとバイオハザードは最初から期待値が低かったからダメージは少ない。だが、バットマンが自分の思っていた程ではなかったのが残念だった。

それでも、例えハズレであっても映画館で映画を観るのは楽しい。予告が終わり、館内の照明が落ちていく時の「お! 始まるぞ」という高揚感。あれは映画館でないと体験出来ない。そしてあの瞬間は何度味わっても飽きることなく楽しい。
素晴らしい映像や迫力のある音響は、狭い自宅の部屋では未来永劫不可能だ。

たかだか3回連続でハズレを引いたくらいでは、別に落ち込んだりはしない。次の映画で当てればいいだけだ。人生と一緒。とりあえず、生きていれば、次は面白い映画に出遭えるかもしれない。