Some Were Born To Sing The Blues

Saxとジャズ、ピアノとブルース、ドラムとロックが好きなオッサンの日々の呟き

明日は4番目の彼女とデートだ

明日は久しぶりのデートだ。え? 誰とデートする気なのかって。そんなの決まってるじゃないか。若くて美人でピアノの得意な女性とだ。
と、こういった思わせぶりな書き方をすると、すぐにネタバレするのは必至だ。
明日は、ピアノ教室の体験レッスンを受けて来るのだ。

去年の5月に、俺が通っていたピアノ教室のM先生が音楽教室を退職した。俺が通っている音楽教室はいわゆる「大人の趣味の音楽教室」とでも呼ぶべき種類のものだ。だから、音大を目指しているような若者は生徒にいない。還暦になるまで楽器一つ触ったことのない人や、中年になってから楽器を始めた人、譜面の読み方なんて英語よりも苦手な人など。学生時代に吹奏楽部に所属していて、20年振りくらいにもう一度楽器をやろうなんて人もいたりする。
つまり、生徒の種類も質も様々だ。俺のように若いうちに中途半端に楽器を齧って、無駄に知識だけは持っている頭でっかちの面倒くさい生徒もいる。
俺が去年習っていたピアノのM先生は、そういった玉石混淆の生徒を相手にピアノを教えていたのだ。彼女は音大を目指すような人を相手にレッスンを行いたいと思い、音楽教室を辞めていった。素人相手の手慰みとしてのピアノではなく、ピアノ演奏に命を懸けるような人相手にピアノを教える先生になるのだと。当たり前の話だが、素人相手に楽器を教えるのも、音大を目指す人にピアノを教えるのも、どちらもそれぞれに難しさがあり、それぞれに教える喜びがあるだろう。人に何かを伝える職業に上も下もない。
彼女の想いや考えを俺がとやかく言える筈もなく。ただ、まだまだ若い彼女の未来に栄光あれ!と思っているだけである。

ピアノ教室は他にも先生が2人いたのだが、どうもレッスンの枠が一杯だった。つまり、ピアノレッスンを受けることが出来ない状況が去年の5月から発生していた。選択肢としては、他の音楽教室のピアノ科に通うか、すっぱりピアノのレッスンを諦めるかのどちらかしかない。ピアノのレッスンを諦めるという考えは最初からなかった。きちんとした先生からピアノを習わないと、独学でピアノを続けていくのは、俺の腕ではまだ無理だ。
となると、他の音楽教室でピアノのレッスンを受けるしかない。
だが、俺はそのピアノ科のある音楽教室で既にSaxのレッスンも受講していた。SaxのY先生は俺がジャズでアドリブ演奏が出来るようなレッスンをやって欲しいというリクエストに応え、そういった内容のレッスンを実施していた。
Y先生のレッスン内容に不満はない。それにY先生のレッスンを受けていたおかげで、久しぶりにジャズセッションにも参加出来た。となると、金銭的に問題が発生しない限り、Saxレッスンを辞める理由がない。

そこで俺は、翌年(2022年)の4月になれば新卒の音大出身のピアノの先生がこの教室に採用されるのではないかと期待した。先月、木村多江に似た美人スタッフ(どうしてこう、どうでも良い情報ばかり俺は書くのか?)に「そういや、新しいピアノの先生って採用するんですか」と訊いたところ、採用予定はないとあっさり言われた。
なんだよ。だったら1年近くも待つ必要なかったじゃねえか。

と、言ってはみたものの、実際問題去年はブルースバンドが活動を再開したし、旧友とやっているアコースティックギターデュオも再結成したりと、音楽活動はそれなりに忙しかった。そう考えるとピアノをお休みしていたのは、ちょうど良かったのかもしれない。
ピアノに関しては、ふと思い出した時に「セントルイスブルース」を弾くくらいだった。ピアノを始めてもう5年くらい経つのだが、その間トータルで2年くらいはよんどころない事情により休止している。

もう今通っているところではピアノが習えないのは確定した。どうするか。この教室のある駅の反対側出口に、同じ音楽教室の別支店があるのだ。そちらではピアノ科にもまだ生徒を受け入れる余裕があるらしい。
こんなことなら、もっと早くそちらに顔を出すべきだった。

別支店に行き、「ピアノレッスンを受けたいのだが」と切り出す。スタッフはA、B2人の先生がいます、どちらの先生にしますか?と問う。会ったことも話した事もない2人だぞ。選べる訳ないだろう。先生によって、お休みの日が違うので、どちらが都合が良いかという意図の質問だった。
俺はうーんと考えながら言う。「あ、そうだ。あの自分が受けたいレッスンて、譜面を完璧に再現するような、そういったものは受けたくないんです。コードしかない譜面とかを元に、そこから自分の演奏が出来るようになりたいんです」と趣旨を伝えた。するとスタッフが「そういったレッスンを希望するなら、これはもうB先生です。Bはそういった事もプライベートでもやってますから」と力強く言う。

ここまでスタッフの強い推薦があるなら、Bさんに習うしかないだろう。体験レッスンの予約を入れる。体験レッスンは無料なのでこれを受けない手はない。それに体験レッスンの場で、俺自身がどんなことをやりたいかをB先生に伝えておかなくてはならない。そうしないと正規のレッスンを始められない。

音楽教室でピアノを教えるような人は、多少の差はあれ音大でクラシックピアノをみっちりやってきている。つまり譜面を読むことに長けていて、初見ですらすらと難しい曲も演奏出来るような人達だ。
だが、俺がピアノでやろうとしているのは、そういったことじゃない。楽器店の楽譜コーナーに並んでいるようなピアノ譜を買ってきて、それを再現するのが目的じゃない。
必要最低限のコードしか書いていないような譜面を見て、そこで自分のアドリブも交えて、ブルース色のあるピアノを弾けるようになりたいのだ。それが俺のピアノプレイヤーとしてのゴールである。死ぬまでに辿り着けるかな?

さて、明日はとりあえずピアノのB先生との初顔合わせだ。俺のやりたい事を伝えて、どんなレッスンをやるかのおおまかな方向性を決めなくてはならない。俺の要望を受け入れてくれる柔軟性がBさんにあることを祈るだけだ。
B先生はきっと「あ、めんどくせーオッサンが来た。出来もしないくせに、やりたいことや展望だけ偉そうに延々語る蘊蓄ジジイだ」と思うことだろう。
すまんね、B先生。申し訳ないので、ここであらかじめ謝っておく。ここでごめんなさいを言っても意味はないのだが。f:id:somewereborntosingtheblues:20220402013736j:plain

札幌で50歳にしてピアノを始めた。あの時は具体的に自分がどんなことをピアノでやりたいのかよく判っていなかった。やっと自分がやりたいものを見つけた頃、東京転勤で札幌を離れ、札幌でのピアノの先生にはさよならを言う羽目になった。
東京でピアノ教室に通い始めたが、コロナの影響で教室は休会になり、殆どまともにレッスンを受けられなかった。川崎に引っ越して、やっと俺の要望を受け入れてくれる先生と出会えたが、半年足らずで先生は職を離れた。

さて、俺の4番目のピアノの先生は、どんな人だろう。怖くもあるが、それよりも楽しみのほうが今は強い。