Some Were Born To Sing The Blues

Saxとジャズ、ピアノとブルース、ドラムとロックが好きなオッサンの日々の呟き

負け犬の歌(ブルース)

2年振りにブルースバンドが復活した。そして解散した。なんだそれ。f:id:somewereborntosingtheblues:20211209233202j:plain

コロナで世の中が自粛自粛となる前に、ほんの1回だけセッションをやったブルースバンドがあった。そのバンドの発起人でギターのK君から「またやりましょう」と復活の狼煙が上がった。俺は一もにもなく賛成。そのセッションでたった1度だけ合わせた事のあるボーカルのAさん、そして新規に募集を掛けたベースのSさん、合計4人でスタジオに入った(俺の担当はドラム)。

約2年振りのスタジオは非常に楽しかった。他の楽器と合わせてドラムを叩くのがこんなにも楽しいとはね。
楽器演奏に関しては、自分独りで完結する人も中にはいると思う。ギターやピアノの弾き語りとか、自分で全パートを演奏して多重録音する人とか。
そういった志向の人を俺は否定する気はない。単純に俺とは目指しているものが違うだけの話だ。
コーヒー好きが紅茶好きを否定しても意味がないのと同じである。

練習後に居酒屋で音楽談義やバンドの話を延々としたのも実に久しぶりで楽しかった。旧友とやっているアコースティックギターデュオも練習後にダラダラと居酒屋でお喋りをする。それと一緒だ。
旧友とはさすがに30年以上の親交があるから、音楽以外にも話題は多岐に渡る。今回のブルースバンドは、そういう意味では付き合いが浅い分、話題がバンドに集中した。

よし、やったるぞ!
そう思ったのも束の間、翌日ボーカルのAさんが「やっぱり辞めます」とlineにメッセージを入れていた。辞める理由に仕事が忙しいことを書いていたが、俺には辞める理由の見当がついた。が、辞める人間にごちゃごちゃ言っても栓のないことだ。きっと「もう一度一緒にやろう」と誘っても、首を縦には振らないだろう。覆水盆に返らずだ。
別れを告げてきた女に追いすがっても、女が振り返らないのと同じである。え? 追いすがったら、復縁したことある人っているの?(俺は過去にそんな経験をしたことがないので、判らない)

ギターのK君から「ベースのSさんは完コピ主義なんで、うちのバンドは合わないから辞めるそうです」と連絡が来た。
俺達がやってるのは、ブルースだぞ。ブルースで完コピ(完全コピー)をして何の意味があるのだろうか。いや、ない(反語)。
過去の先人、偉人が演奏したブルースを俺達のスタイルで消化、昇華してこそのブルースではないか、などと偉そうに論じても意味がない。
ベースのSさんが俺達とやらないと決めたのにはきっと色々理由があるだろう。
例えば、ドラムの練習態度が気に喰わないとか、ドラムが下手過ぎて一緒にやる気が起きないとか。なんだ、全部俺のせいか。

正直、一緒にやらない理由をあげつらったところで何の解決策も見出せない。ボーカルのAさんもベースのSさんも俺達とはやらないと宣言したのだ。俺達はその決定を飲み込む以外にやれることなぞない。

ギターのK君は変わらず「新しくメンバー探しましょう」と言ってきた。彼はまだ俺と一緒にバンドをやることに倦んではいないらしい。奇特な人である。

札幌時代を思い出した。バンドが上手く行き始めたと思った時に、新メンバーを加入させようとしたら、既存メンバーと軋轢が生まれてバンドが消滅した。あの時も「このバンドは絶対に良くなるな」という確信があった。ところが、その確信が生まれてから数ヶ月もしないうちにバンドは消滅の憂き目に遭った。
今回も同じだ。「2年近く辛抱して、よし行けるぞ!」そう思ったら、あっさり主要メンバーが抜けた。
だが、人生なんてそんなもんだ。禍福は糾える縄の如し、人生万事塞翁が馬と言うではないか。
若かった頃、久しぶりに恋人が出来て浮かれていたら、あっさり浮気されて、別れを告げられたことを思い出した。あの時の悲しい気持ちを思い出せば、今回のバンドメンバーの離脱なんて大した話じゃない。
生活を共にした相手に年収の半分を持ち逃げされた過去を思い出せば、ボーカルやベースがいないくらい、楽勝じゃねえか。なんか過去の一番悲惨な体験と比べて、無理矢理気持ちを持ち上げようとしていないか?

いやいや。バンドメンバーなんて、友人や恋人或いは伴侶と同じ。巡り合せ、運、縁が大事なのだ。今回はそれが無かっただけだ。
そう思えば、特別痛い話でもない。また新しい仲間を見つければいいだけのこと。

こちらが歩みを止めなければ、きっとまた素敵な人が見つかることだろう。そう、無駄にポジティヴに行こうぜ。そのくらいの能天気さで生きていくのがちょうどいい。