Some Were Born To Sing The Blues

Saxとジャズ、ピアノとブルース、ドラムとロックが好きなオッサンの日々の呟き

blogを読んで、人生が変わったという話

世の中に存在する大量の個人blogは、自分の日々の日常を綴った備忘録的な物と、広告を貼って収入を得ようとする商業的な物の2つに分類されると思う。かなり大雑把な区分けではあるが。
勿論、俺のblogは完全な前者である。個人的な話しか書いていない。他の人も大抵は自分の個人的な話に終始していることが多いと思われる。それでも、そういった個人の何気ないblogの文章が誰かに影響を与えることがある。
今日はそういった話を書く。

10代の頃はハードロックばかり聴いていた。他のジャンルは殆ど聴かなかった。20歳くらいになって、大学の先輩からローリングストーンズを薦められ、そこから、ぽつぽつとオールドロックなども聴くようになった。

何が切っ掛けかは思い出せないのだけれど、20代後半辺りに気まぐれにジャズを聴くようになった。それでもロック70%、ジャズ20%、それ以外10%。そんな割合じゃなかっただろうか。変わらずロックばかり聴いていたのは、当時ローリングストーンズのカバーバンドを友人らとやっていたからだ。
30歳を過ぎた辺りで、バンドが自然消滅的に解散し、ジャズを聴く比重が増えた。そこで思い切って、御茶ノ水に行ってポンコツアルトSaxを買ってきた。無名メーカーの5万円のアルトSaxだ。正直言って、5万円のSaxなんて買わないほうがいい。
バンドも解散し、やる事もなかったのだから、そこからSaxを習得しようとすれば良かったのだが、そうはならなかった。

ならなかった最大の理由が「Saxは家で練習出来ない」という点だ。この辺りがギターと違う。Saxを習得する為にはスタジオやカラオケボックスで練習しなくては無理。正直言って、吹奏楽とかの経験がない人間が独学でSaxを習得するのは、不可能ではないが、かなり難しいと思う。
当時、銀座にあるSax教室に数回通ったのだが、家から電車に乗って40分掛けて通うのがなかなか厳しかった。おまけにグループレッスンだったから、他の生徒さんと一緒に吹く、これも無理があった。

30歳を過ぎた頃に会社を変わったので、給料がちょっとばかり増えた。これが良くなかった。何故か。毎週末、酒を呑み歩くようになったからだ。バンドが解散したから、ベースの練習を一切やらなくなり(当時担当はベースだった)、酒ばかり呑んでいた。とある月なぞ、酒代とタクシー代で10万円を超えた事もあった。阿保である。

そんな風にだらだらと30代を過ごしているうちに、38歳になった。ポンコツSaxは押入れの奥に仕舞い込んだままだった。俺の30代は恥ずかしながら、「酒と***(恥なので伏字にさせて頂く)」しかなかった。

38歳になった1月の初旬、酒を呑みながらとあるblogを読んでいた。年明けの最初の更新で「今年の目標」みたいな事を書く人がいる。俺は一度もやった事がないけれど。そのblog主は当時20代半ばの男性だった。彼はblogにこう書いていた。

「僕は今年、フルートをやります!」

その一文を読んだ瞬間、俺は頭をガツンと殴られた気分になった。俺、Saxもやらずに何やってんだろ? 本当に彼のblogを読んだ瞬間に、8年程すっかり忘れていたSaxの事を思い出した。酒呑んで酔っ払ってる場合じゃない。俺はすぐにネットでSax教室を検索した。家から自転車で10分程度のところに教室があった。俺は全くなにをやっていたのか?

すぐに教室に通い始め、Saxを吹き始めた。今年でSaxを始めて17年になる。Saxを人前で吹いた経験も増えた。パーマネントなバンドに所属したことはないが、セッション等でギター、ベース、ドラムと合わせた回数もそれなりになった。Sax教室を通じて友人や仲間も出来た。解散してしまったが、ネットを通じて知り合ったブラス仲間とバンドを5年程やる事も出来た。酒に酔って二日酔いになる事とは比べ物にならない良い趣味を俺は手に入れた。

17年前、彼のblogのあの一文を読まなかったら、俺はきっとSaxを始めていなかったろう。仮に今Saxを吹いていたにしても、始めるのはもっと遅くなっていただろう。多分、Saxを吹いていない可能性のほうが高い。
そして、俺がSaxを始めた事は、ドラムを叩く事にも繋がった。複数のバンドでドラムを叩くという望外の喜びを得る事も出来た。先月、ブルースバンドでライブをやれたのも、17年前にSaxを始めたことがトリガーとなっている。
ドラムを始めた切っ掛けもまた整理して、そのうち書きたいと思う。

「フルートを吹きます」と書いた彼は、単に自分の目標をblogで宣言したに過ぎない。それ以上でもそれ以下でもない。でも、彼のあの一言が間違いなく、俺を変えた。
俺が今、五十の手習いでピアノをやっているのも、38歳の時にSaxを始めたからだ。Saxを中年になって始めたという経験があるから、ピアノにも臆することなく始めることが出来たのだ。

blogだけの話じゃない。何の気なしの一言や、深い意味も持たずにした行動が誰かの人生を変える事があるのだ。
経験者の俺が言っているのだから、間違いない。

貴方の一言が、誰かの人生を変えるかもしれない。
そして、誰かの一言が貴方の人生を変えるかもしれない。