Some Were Born To Sing The Blues

Saxとジャズ、ピアノとブルース、ドラムとロックが好きなオッサンの日々の呟き

ジャズは自由だ

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まだ、相方と一緒に東京で暮らしていた頃の話だ。
池袋に、初心者相手のジャズのセッションに参加出来る店があった。店は今でもきっとあるだろう。
俺はテナーサックス、相方はピアノで参加していた。

課題曲は「Fのブルース」という初心者が一番取っ付き易いブルースで、各自12小節のアドリブソロを順番にプレイするというもの。ひたすら各楽器が順番にアドリブを演奏するだけだから、予めテーマとかを覚えておく必要がない。あくまでも体験というか入門の位置づけ。「ジャズセッション」ってこんな感じなんだよというのを体験して貰う為のもの。
これに慣れると、「初級者」「中級者」「上級者」とランクアップしていく。その判定は店のオーナーが行う。

俺はスケールもよく判らずに(実は未だによく判っていない。というか覚えていない。早く覚えろって話だ)、適当にアドリブをやっていた。アドリブ自体はギターでもやっていた経験があるから、大きな枠の中では一緒だ。ただ、指の配置を覚えれば、どのKEYでも対応出来るギターと違い、サックスはKEYが変わると、それまでの流れが使えないから(これも経験次第だと思うが)、なかなかやっかい。とかいいつつ、俺は未だにFのKEY(ブルーノート・スケール)も曖昧なんだが。こういうのは日々やらないと駄目なんだよなあ。

相方は自分のアドリブソロの番が来ると、なんとか無難にこなしていた。が、店を出てから「ジャズってさ、自由なんでしょ。だったら、ソロをやらない自由があっても良いよね?」と俺に訊いてきた。さすがに店内で「ソロはやりたくありません」と言うのが憚られたのだろう。
俺は「ジャズをやる(演奏する)」=「アドリブソロをする」だと思っていたから、相方の言う「ソロをやらないのもOKだよね」という発想には衝撃を受けた。ああ、そうか。そういった考えもあるのか。

サックス(トランペットやトロンボーンも同じだろう)はソロをやらなかったら、吹くところがなくなるから(テーマは吹くけど)、ソロをやらないという考え方はほぼないと思う。だが、ピアノはソロがなくても、ずっと曲の頭から最後まで伴奏を担う部分もある。だから、ソロ無しでも、やる事がなくて退屈という事にはなるまい。
また、ソロを演奏するほどの自己主張はないけれども、曲を成立する為の一部になりたい、そういう考えがあっても良い。

ロックとかだと、ギター二人編成のバンドも結構多い。そういった場合、「リード・ギター」と「サイド・ギター(リズム・ギター)」みたいに役割が分かれている場合がある(この役割が曖昧で、それぞれ曲によって立場が変わるギターコンビも多い)。
リードの担当は、ソロやオブリガード、つまり目立つパートを受け持つ。サイドのほうは、コード演奏が主となる(比較的目立たない。重要な役割ではあるのだが)。ギター二本でアレンジする事により、ギターパートが重厚になる訳だ。

この場合、サイド・ギター担当の人が「俺にもソロやらせてくれよー」と思っているか、「いや、俺はソロなんか弾かなくても充分にギター演奏を堪能してるから問題ない」と考えるかは当人次第だ。

昔、学生時代の仲間とローリングストーンズのカバーバンドを結成した。上記の例で言うと、俺がリード・ギターを担当し、旧友(先輩)がサイド・ギターの役割だった。この分担も旧友の独断専行で決まった。
俺が「ねえ、リードとサイドの分担、どうする?」と尋ねると、彼は答えた。
「リフは自分が弾く。だから、それ以外のソロとかはお前がやれ」
リフというのはロックやポップスにおいて、曲の中で何度も繰り返し演奏される、その曲を象徴するフレーズだ。彼はローリングストーンズのリフが弾ければ、後はどうでも良いというタイプだったのだ。ソロにも興味がなかった(というか、彼はソロが弾けない)。
だから、俺は実はローリングストーンズのカバーバンドにいたのに、ストーンズの代表的な曲のリフは殆ど弾いた事がない。

サックスでジャズをやるとカルテット(サックス、ピアノ、ベース、ドラム)という編成が多いと思うけど、カルテット+1みたいな形態もあっていいんじゃないかと思った。アドリブソロを担当するリードサックスと、テーマと伴奏(コードや簡易なフレーズのみ担当)を演奏するサイドサックスみたいなね。
(この考えを突き詰めていくと、ビッグバンドになってしまうのかもしれないが)

相方が昔に言った「ジャズの演奏をするのは嫌いじゃないけど、ソロはやりたくないなぁ」と、「ソロには興味がない」と言い放った旧友の言葉を思い出し、こんな事を考えた。

ジャズは自由な音楽だというのなら、こういった自由も許されて良いんじゃないかな。