Some Were Born To Sing The Blues

Saxとジャズ、ピアノとブルース、ドラムとロックが好きなオッサンの日々の呟き

少年がギターを手にするのは「女の子にモテたい」からであり、ギターが弾けるようになったら、女の子にモテるようになるのか?

世の中には、ギターが弾けると女の子にモテると信じている馬鹿な男がいる。そして世の中には、ギターを弾く男は女の子にモテたくてギターを始めたと思っている女性がいる。
これはどちらも間違いである。

そもそも女性にモテたくてギターを弾けるようになろうなんて思う馬鹿がいる筈がない。何故なら、それはコスパが非常に悪いからだ。ギターというのは、買ったその日に弾けるようになる代物じゃない。これはギターに限った話じゃないが。楽器全般がそうだ。
楽器を購入する、そして練習を重ねる。その結果として弾けるようになる。そこまでの過程で人によって差はあれど、それなりの時間が必要だ。
俺も10代の頃は「1週間でギターが弾けるようになる」なんて教本を何冊買っただろう。どれだけの金をドブに捨てたことか。1週間で弾けるようになれば、苦労はない。
いざギターを弾けるようになったからと言って、そのギターを使ってどうやって女の子にモテるようになるのだろうか。ハードロックのギターをかき鳴らしたところで、女の子がハードロックに興味がなければ「なんかうるさいギターだね」で終わりである。
うちの相方なぞ、ロック聞かせりゃ「うるさい」と言うし、ジャズ聞かせりゃ「退屈で眠くなる」というし、俺の好きな音楽ジャンル全否定である。

そもそも、ギターを弾けるようになろうと思う人は、自分の憧れのギタリストが弾くフレーズを自分も弾けるようになりたい、あの格好良い曲で演奏されているギターと同じ音を出したい、という純粋な憧憬の気持ちからギターを手にするのだ。
俺がギターを手にした最初のきっかけは中島みゆきだ。俺が中学2年生の頃かな。あらま、もう40年も前の話だ。中島みゆきの「ホームにて」という曲がシンプルながら物凄く格好良くて「ああ、この曲のギター弾けるようになりたいな」と思ったのがギターを始めた直接の理由。
その後、俺は音楽の趣味が洋楽ロックに移行して、エレキギターを持つようになる。

ギターを始めた理由に「女の子にモテたいから」なんて要素は一つもなかった。それにギターが弾けるようになったからと言って、女の子にモテるとは限らない。否、逆である。女の子にモテるような男というのは、ギターが弾けなくても女性にキャーキャー言われるのである。
判りやすい例を出そう。
あの人気アイドル、キムタクはギターが弾ける。だが、彼がギターが弾けなかったとしても、彼の人気は落ちないだろう。彼の場合は、ギターが弾けることが人気の上積みをしているだけであって、ギターが弾けようがそうでなかろうが、やはり彼はモテるのである。
ところがだ。
出川哲朗がギターを弾けたとしたら、どうだろう?(彼が実際は弾けるのかどうかは俺は知らない)彼が格好良く「天国への階段」のイントロをつま弾いたとしても、やはり貴女は「やだよー。あんなのには抱かれたくなーい」となるのではないか? 結局、彼はギターが弾けようがそうでなかろうが、「抱かれたくない男ナンバーワン」の座をキープするのである。今でも「抱かれたくない男ランキング」とかやってんのかな。

という訳で、ギターが弾けたところで女の子の間で人気者になることはない。女の子にモテたかったら、ギターの練習する前に金持ちになるか、格好良いファッションの勉強でもしたほうが良い。f:id:somewereborntosingtheblues:20210416014412j:plain
(この写真は2015年秋くらいにやったライブの様子)

これで終わってしまうと身も蓋もないので、今日唐突に思い出した昔ばなしを最後にしよう。
高校生の時の話だ。教室で俺はギターを弾いていた。弾いていたのはハードロック。「Since You've Been Gone」という曲だ。これはQueenのブライアン・メイもカバーしているので、興味のある人はYouTubeで検索されると幸せになれるだろう。
俺は友人の鈴木君の前でその曲を弾いていた。鈴木君もハードロック好きだったのだ。ちなみに鈴木君はギターが弾けない。2人で「あの曲は良いね」とか「あのバンドはダサい」とかよくありがちなお喋りに興じながら、俺はギターを弾いていた。

数日後、また俺がギターを弾いていると、クラスメートのルミちゃんが俺のところにやって来た。
「ねえねえ、前に弾いてた曲あるでしょ。また弾いてみて」
俺は「Since You've Been Gone」を弾いた。
「うん。格好良いね! この曲好きだなー」ルミちゃんは笑顔で言った。ギターを弾くことで「女の子にモテた!」と実感したのは、この時が初めてである。

夜、ルミちゃんから電話が掛かって来た(当時はスマホも携帯電話もない化石のような時代である)。ギターを弾く俺にルミちゃんが惚れたのかな、などとお花畑なことを考えていると彼女は言った。
「鈴木君と仲いいよね。私、鈴木君の事良いと思ってるんだ。仲取り持ってくれないかな…」

な、ギター弾けても女の子にはモテないだろ。そういうことだ。