Some Were Born To Sing The Blues

Saxとジャズ、ピアノとブルース、ドラムとロックが好きなオッサンの日々の呟き

人生は不可解だ

人生とは不可解の連続である。
むしろ、自分の思った通りに物事が進む人のほうが圧倒的に少ない。「いやー、俺の人生、予定通りに進んでウハウハだぜ」なんて人がいたらお目に掛かりたい。

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今から14年前の話になる。俺は某生命保険会社の現場にいた。とあるシステムの設計、製造を任されたのだ(俺の仕事はシステムエンジニア)。その現場は非常に緩い現場で、仕事の進め方もとてもアバウトだった。
ソフト開発に携わった事がなくても、想像がつくと思うけれども、大抵の仕事は「資料や設計書を作ったら、お偉いさんのチェックが入り、OKが出て初めて仕事完了」となるのは判ると思う。
だが、その現場はそういったチェックが一切無かった。俺が作った設計書は無条件でOK扱いとなって、俺が作ったシステムは、誰のチェックもないまま、本番リリースされた。ちなみに、後にも先にも、こんな現場に入った事はない。

職場の雰囲気も非常に緩かった。俺の席の近くに、アンジェラ・アキにそっくりな帰国子女の女性がいたのだが、彼女は仕事中も英語で私用電話を掛け捲っていた。「Oh,Really?」なんてデカい声で喋っているのだ。内容は判らずとも、仕事の電話でないのは明確だった。後で仲良くなった女性社員の人に「アンジェラさんて、私用電話しまくっているよね」と言ったら「彼女、有名だから」と返された。会社公認で私用電話をしている人に初めて会った。

俺の担当したシステムは、事務の人達がメインで使うものだった。俺はシステム部の社員の人に「***の業務画面とか、実際に使う人に話訊いて、設計進めたいんですが(なので、会議の調整とかお願いします)」と言うと、「勝手に進めて良いよ」と言われる。
こういった場合、「言った、言わない」とか「責任の所在」とかの問題が後々起こるから、社員の人同席で進めるのが常識。俺のような下請けのエンジニアが勝手に事務担当の社員の人と話を進めるというのも聴いた事がなかった。

だが、俺も図々しい人間なので「じゃ、俺の好きなようにやってしまえ」となる。俺は勝手に事務担当の女性社員のところへ行って「***の件で、打ち合わせお願いします」と言ったり。
俺が担当するシステムをメインで使う事になっていたのは、事務担当の女性社員何人か。その中で、一番美人(女優の竹内結子さんに似ていた)で巨乳のU子さんとよくミーティングをした。
勿論、最初は純粋に「ここで、こういった入力チェックが必要ですよね」とか「画面のレイアウト考えてきたんで、確認して下さい」とかやっていた。

だが、そういった確認作業が済むと、後は俺が実際に設計作業をやるだけなので、U子さんと話す必要はあまりなくなる。それでも俺は年中、U子さんのところへ顔を出した。
「あら、今日の用件は?」
「いや、特にないです。U子さんとお喋りする為に来ました」
「そうなんだ。飴食べる?」
みたいな。今思い返してみても、仕事やってんだか、遊んでるんだかよく判らない。あの現場には一年程いたが、もっといたかった。あれだけ自由勝手にやらせて貰えた現場は他には見当たらない。

あの現場は服装も自由で、システム部の男性社員は、Tシャツで出社していた。俺は「ここ、TシャツOKなのか」と思い、翌日Tシャツで出勤したら、他のエンジニアに「さすがにTシャツはやめとけ」と怒られた。
だが、U子さんなんか、タンクトップで仕事をしていた。職場で、タンクトップを着ている女性社員がいる現場もここが最初で最後だ。季節は夏だったが、いくら夏だからって、タンクトップはないだろうと思ったものだ。
U子さんは巨乳だったから、眼福だったのを否定する気はない。

U子さんと仲良くなって、数カ月が経ち、仕事や仕事以外の話も普通にするようになって、俺はU子さんに言った。
「U子さん、今度飲みに行きましょうよ」
当然、女性を飲みに誘うというのは、そういった狙いだ。というか、それ以外の狙いが有ろう筈がない。U子さんは言う。
「Aちゃんも誘っていい?」
Aちゃんというのは、U子さんの同僚の女性。俺は何度か話をした程度。それも仕事絡みのみ。だから、Aちゃんの事はよく知らなかった。
まあ、最初からサシで飲むってのもね。三人で飲むか。慌てる乞食は貰いが少ないって言うぜ。俺は了承した。

そのAちゃんが、後の俺の相方である。俺は明確にU子さんを狙っていた筈なんだが。どうしてこうなったのか。
人生とは不可解だ。