Some Were Born To Sing The Blues

Saxとジャズ、ピアノとブルース、ドラムとロックが好きなオッサンの日々の呟き

給料を前借りして、キャバクラに行くという事

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世の中には色々な人がいるから面白いと思うのだが、時々、こいつは一体何を考えているのだろうか、と思う奴に遭遇する事がある。
これは悪い意味でだ(俺も人からそう思われている可能性は否定出来ない)。

東京時代に勤めていた会社に、山上君という男性がいた。異常に自己肯定能力が高く、何か問題が起きるとそれを全て人のせい、周りのせいにするという非常に面倒臭い奴だった。
口癖が「社会が悪い」。自分の給料が安いのも、生活が上手くいかないのも、全て社会、政治家が悪い。酒の席で年中そういった事を言っていた。
俺は最初「この人、冗談で言ってんのかな」と思っていたが、いつまで経ってもずっと同じ論調だったから、本気でそう思っていたのだろう。
俺だって今の政治家はクソッタレの奴らばかりだと思っているから、そこは同意してもよい。だが、彼の個人的な生活が上手くいかないのは、彼自身の問題だ。

山上君は年がら年中、給料の前借りをしていた。俺は給料の前借りをした事がないので、よく判らないのだが、どうしてそういった事が発生するのか?
給料の手取り額から家賃、光熱費、必要経費(俺だったら、ピアノやサックスのレッスン代とか)を計算すれば、必然的にいくら自由に使えるか、判明するはずだ。
会社の事務、経理を担当していた美鶴さんが「また今月も山上君、前借りなんだよねー。勘弁して欲しい」と嘆いていた。

俺は山上君に「前借りばっかりして、美鶴さんに迷惑掛けるの、やめろよ」と言ったが、彼は全く意に介していなかった。
「美鶴さんは俺を信用してくれているんだ。だから俺は前借り出来るんだよ」と山上君は自慢げに言ったが、これも壮大な自惚れだ。
零細企業の会社に、そんなに気前良く前借りさせてくれるだけの内部留保がある訳がない。山上君が前借りしていた金は、全て美鶴さんがポケットマネーから用立てていたのだ。
毎月、山上君が前借りする、美鶴さんが自腹で立て替える、そして美鶴さんが俺に愚痴る。このルーティンワークだった。
「本当に山上君にはなんとかして欲しい。私だって自由に使えるお金がそんなにある訳じゃないし…」
俺は美鶴さんに「山上君に前借りのお金は私の財布から出てるんだよ、って言えばいいじゃん」と何度か酒の席で言った。が、何故か美鶴さんはそれを山上君には言わなかった。理由は判らない。同情していたのかもしれない。
それなのに山上君は、ほぼ毎月前借り。詳細は知らなかったし、知る気もなかったけれど、彼は株とか相場(要するにマネーゲーム)に手を出していたらしい。それらしき話を時々、飲み会の席でしていたから。
一介のサラリーマンがそんなものに本気でのめり込んだら、きっと前借りどころじゃ済まないから、それはある程度抑えた額だったとは思うが。

あと、キャバクラ通い。いい歳して(当時山上君は既に40歳を超えていた)「現場の皆とキャバクラ行って、8万も使った」とか武勇伝のように語るのを聞いて、こいつは正真正銘の馬鹿だなと思ったものだった。
給料前借りして、キャバクラに行く奴が利口な訳がない。
俺はキャバクラ通いを否定はしない。若い女の子と話をしたいが機会がないという場合、キャバクラは金さえ払えばそういった場が設けられるのだから、それは選択肢として有りだと思う。

俺がキャバクラに興味がないのは、物凄く単純に若い子に興味がないからというのが理由の一つ。もう一つは、キャバクラで働いているキャバ嬢は、大抵会話が詰まらない。
水割りを作って、こちらが煙草を咥えれば火を点けて、それだけだ。あとは客が面白い会話を始めるのを待っているだけ。
それでルックスが仲間由紀恵レベルなら許そう。というか、由紀恵ちゃんそっくりなキャバ嬢がいるのなら、俺も通い詰める。
だがそうじゃない。何万もキャバクラに払うくらいなら(俺はキャバクラの相場は知らない)、その金でライブに行くか、楽器を買うかでもしたほうが断然良い。
ちなみに、俺はキャバクラは人生で三回しか行った事がない。いずれも上司や先輩の奢りだから、いくら掛かったのかも知らない。今後も行く気は当然ない。

山上君は、23歳くらいの亜矢ちゃんという子と付き合い始めたと報告してきた。キャバ嬢だと言う。
へえ、よくそんな若い子が山上君みたいなオッサンと付き合ってくれたなあと感心したが、話を聞いて俺は段々と気分が暗くなってきた。
亜矢ちゃんの誕生日にブレスレットをプレゼントしたのだが、それ以降のデートで彼女がそれを身につけているのを見た事がないと彼は言っていた。
「故障したから直してるんだって」と山上君は普通に話していたが、ブレスレットってそんな簡単に壊れるか?
そして修理にどんだけ掛かっているのかという話だ。
また、デートしていると山上君は話しているのだが、内容を聞いていると、それデートじゃなくて「同伴出勤じゃね?」と突っ込みたくなるものだった。
付き合って何ヶ月も経つのに、どうみてもキスもしていなければ、その先の進展もなし。いい歳した大人の付き合いでそれってあり得るのか、と。
俺は美鶴さんに「山上君てさ、亜矢ちゃんと付き合ってないよね。あれ、キャバ嬢と客の関係だよね」と訊くと、美鶴さんも頷いた。
「私もそう思う」

山上君がいよいよもって金に窮してきた頃に、亜矢ちゃんの話を聞くことがなくなった。金がなくなって、同伴出勤の誘いに応える事も出来ず、店に行く事も出来なくなったから、亜矢ちゃんと「付き合えなく」なったのだな、と。
そして山上君は色々と問題を起こし、会社を辞めて地元の***(伏せておく)に帰った。一度「元気にやってる?」とメールしたら「こっちは仕事が全然ないんだよ。牛丼屋の店員くらいしか仕事がねーんだぜ」とまた謎の上から目線の発言が返って来た。お前は牛丼屋の店員さんに謝れ!

年老いた母親の年金を貰って遊んでるくらいなら(美鶴さん情報)、牛丼屋でバイトしろ!と思ったが、こういう奴は言うだけ無駄なので適当にお茶を濁して終わりにした。
それ以後、彼とは連絡も取っていないし、取る気もない。

俺は自分が立派な人間だとは当然思っていないし(『人間のクズ』と、よく言われる)、人を非難したり否定出来るほど偉いとも思っていない。
だが、自分を客観視出来ない、人に迷惑を掛けているのにそれに気づかない、そういう奴は嫌いだ。そして、自分の失敗を全て自分以外のモノに転嫁する奴も嫌いだ。成功も失敗も全て自分が蒔いた種だ。他の誰の所為でもない。
それに気付かない馬鹿は、豆腐の角にでも頭をぶつけて死んだほうがいい。ただ、それを言い出すと、一番最初に頭をぶつけるべきは、俺だっていう気がしなくもない。