Some Were Born To Sing The Blues

酒好き(2017年秋に断酒を宣言)、音楽好きな中年のおっさんの日々の呟き。趣味はテナーサックスとドラム。2016年冬に50歳目前で札幌に引越し、2017年春にピアノを始めました。そして2019年6月に東京で一人暮らしを開始。2020年10月に神奈川に移り住む。生々流転の日々。

けんかをやめて、ふたりをとめて

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昨日の事である。電車の中で喧嘩に遭遇した。
仕事帰りの山手線の車内。東京に詳しくない人に簡単に説明すると、山手線は、新宿、渋谷、上野、池袋、品川といった都内の主要ターミナル駅を走る環状線である。朝夕のラッシュアワーはめちゃくちゃに混んでいる。
座って通勤出来た札幌時代が懐かしい。

帰りの山手線、むろん座れる訳もなく、俺は混んだ山手線の中でスマホを見ていた。混んではいるが、スマホをいじる程度の余裕はある。混んでいる電車だと、スマホを見る隙間もない沿線もあるので恐ろしい。
俺が山手線に乗って、三駅くらいした時だろうか、後ろで割と大きな声が聞こえた。
「気持ち悪いって、どういうことだよ?」
思わず振り向くと、オタクっぽい感じの人と、若いサラリーマンが口喧嘩をしている模様。俺の後ろで起きていた事なので、どういった理由でトラブルが起きているのか、最初は判らなかった。
「人のこと気持ち悪いとか言って。お前、謝れよ」オタク君が怒声を浴びせる。若リーマンも言い返す。
「アンタが俺を無理矢理押すからだろ!」
ああ、なるほど、そういうことね。山手線は大抵の駅で大量の人が降りて、そして大量の人が乗ってくる。当然、その時は押した押さないの小競り合いは日常茶飯事。よっぽど酷い押され方とかをしない限り、大抵の人はそれをぐっと飲み込んで、何事もなかったかのように電車を降りていく。
東京で電車通勤/通学をしている人には当たり前の景色だ。

今回もオタク君が若リーマンを押した、そしたらそれに怒った若リーマンが「気持ち悪い」と呟いた。それにオタクが切れた、そういう話だ。
二人は、本当にちょうど俺の真後ろでやり取りをしていた。というか、二人の口喧嘩で、周りの人が避難して、そこだけぽっかりスペースが出来たみたいな状況。
オタク君が若リーマンに「失礼な事言ったんだから、降りろよ」と言う。すると若リーマンが「降りないよ」と言って、少し移動した。
どうやら話は決着したようだった。
随分昔も、駅のホームで殴り合いの喧嘩をしているサラリーマン二人に遭遇した事があった。その時俺が思ったのは「仲裁役の駅員さんが可哀そうだなあ」である。駅員さんは電車が遅れれば乗客に文句を言われ、喧嘩があれば仲裁をし、痴漢がいれば、警察呼んだりと、いろいろ大変な仕事であると思う。

喧嘩も終了したようなので俺はまた前を向いてスマホを見ていた。今日俺は、以前の現場で仲の良かったヒカルちゃん(24歳)と二人だけで酒を飲む約束をしているのだ。車内の喧嘩なんかに興味はない。それよりもヒカルちゃんと二人での飲み会のほうが俺にとってははるかに大事。
5分程したら、また怒声が聞こえた。
「気持ち悪いってどういう事だよ!」
無論、声の主は先ほどのオタク君。ってゆーか、お前、収まったんじゃないのかよ。5分したらまた怒りが再燃したのか?
後ろを見ると、移動した筈の若リーマンがオタク君と対峙していた。まあなあ、移動したといっても混んだ車内、また二人の立っている場所が近くなって、それでオタク君が若リーマンの顔を見て、文句を言ったという事なんだろう。
「人に向かって気持ち悪いって言ったんだから、お前謝れ。謝れよ」
オタク君は同じ事を言い続けている。声もかなりでかい。車内じゅうに響き渡る大きさだ。若リーマンは普通の音量で「そっちが押すからだろ」と先程と同じ反論。
「押されたら、気持ち悪いって言っていいのかよー」とオタク君の大声。

さすがに俺の真後ろでやられていたので、ちょっと黙っていられなくなった。振り向くと、見事にオタク君と若リーマンの辺りだけ再びスペースが出来ている。他の人は再度避難している状況。
「おい。もうその辺にしとけ。そんなでかい声で文句言い続けてたら、俺は駅員を呼ばなきゃなくなる。あと10分もすれば、それぞれ右と左に分かれるんだ。もう互いに会話しないで、黙って10分過ごせば済む話だろ。そのほうがハッピーだろ?」
俺はオタク君に言った。だが、オタク君は「人に向かって気持ち悪いって言っていいのかよ!」と大音量でまた文句。
「だから、もう止めろって言ってるんだ。そんな大声出してるアンタも、皆に迷惑掛けてるんだぞ」
オタク君も押し黙った。若リーマンが俺に軽く会釈する。「ありがとうございます」という意思表示だろう。

暫くすると、肩を叩かれた。見ると俺の斜め後ろに若リーマンがいた。「先程はありがとうございました」と言うので「まあ、タイミングでああいった事もありますよね」と俺が言う。すると若リーマン「ま、ボクも悪いんですけどね」なんだお前、本当に「気持ち悪い」って言っちゃったのかよ。そこは思うだけにしとけ。言葉に出すから揉めるんだ。

ま、無事に終わって何よりだった。
俺自身、車内の喧嘩の仲裁なんかやったのは初めてだ。今後もないだろう(ない事を祈る)。
武勇伝を語っているようだが、事実はそうじゃない。オタク君に言葉を掛けている間、俺は内心ビクビクだった。オタク君に殴られたらどうしよう?とかね。何しろ、車内に響き渡るくらいの大声を出せる男だ。いつ殴りかかってこないとも限らない。また、俺が背中を見せたら、ナイフで刺されるかもとか思ったりもした(ナイフ持って電車に乗る奴は滅多にいないと思うが)。
ここで喧嘩に巻き込まれて、ヒカルちゃんとの二人の飲み会がキャンセルになったら嫌だなとも考えならが、オタク君に説教していた。
だから、若リーマンには感謝されたけど、俺は自分の中では喧嘩仲裁とは別の次元の事を考えながら話していたのである。
また、俺自身が電車を降りた時に「あ、ヒカルちゃんに話すネタが出来たな」と思ったくらいなのだ。
だから、端から見たら、俺は喧嘩の仲裁をした人という体だが、実際はそんな格好の良い話ではない。

俺が喧嘩の仲裁をした最大の理由は、電車に乗る前に缶チューハイを一本呑んで、微妙に酔っていたからである。
それから、明らかな蛇足だが、ヒカルちゃんは男だ。