Some Were Born To Sing The Blues

Saxとジャズ、ピアノとブルース、ドラムとロックが好きなオッサンの日々の呟き

Jump!~Sammy Hagarのライブを観て来た!

9月23日、俺は有明アリーナに出掛けた。Sammy Hagar(サミーヘイガー)のライブを観るためだ。Sammyは、VAN HALENの二代目ヴォーカリストとして知られている。
俺は、VAN HALENのコアなファンという訳じゃない。せいぜいベストアルバムを持っているくらい。ヒットしたアルバムは一通り聴いたという記憶はあるが、それほど熱心に聴いていたのでもない。
ただ、気分がクサクサするとVAN HALENを聴きたくなる。あの陽気で能天気な音楽が気分をupさせるのだと思う。尤も、陽気で能天気だったのは初代ヴォーカリスト、デヴィッド・リー・ロス(以下、DLR)時代だった気もする。
俺がSammyのライブを観ようと決めた最大の理由は、多分これが彼の生声を聴ける最後のチャンスだと思うからだ。Sammyは76歳である。ファンの方には悪いが、いつお迎えが来てもおかしくない。そして俺自身だって、いつあの世に旅立つか判ったものではないのだ。
俺が「自分もいつ死んでもおかしくないのだな」と実感したのは、プロレスラーの橋本真也さんが40歳の若さで亡くなった時だ。人はいつか死ぬ。そして必ず死ぬ。それを考えた時に「やりたい時にやりたいことをやっておこう。そうでないと死ぬ時に後悔する」俺は強くそれを思うようになった。
そして、俺が10代から20代の頃によく聞いていたミュージシャンは、だいたい俺よりも10歳くらい年上が多い。となると、彼らがいつ天国への階段を昇ってもおかしくない。観る機会、生で聴くチャンスがあったら、逃すべきではない、俺自身が50歳を超えてから、それを強く思っている。

有明アリーナは湾が近いせいか、だいぶ涼しかった。ちょうど夏が終わりを迎えていたのかもしれない。開演は18時半から。18時くらいに有明アリーナに到着。ここの問題点は施設内に喫煙所がないことだ。「煙草止めればいいだろ」という正論は言わないように。
既にライブ前にハイボールと缶チューハイは胃の中に収めてある。だが、俺は物理的問題として、アルコールを飲むと異常にトイレが近くなるのだ。それは判っているのだが、そこで飲んでしまうのが、酒飲みのだらしないところである。開演20分前に席に着く。ステージのやや上手(客席から見てステージが向かって右側という意味)横である。ステージが近い。武道館よりも近い感じである。なかなか良い箱であるな。
とりあえず、トイレに行っておこう。そしてトイレから出ると誘惑に負けてハイボールを買ってしまう。これでライブ中にトイレに行くことは必至だ。実際に途中で一回トイレのために離席した。

定刻通りに18時半にライブがスタート。Sammyはとても76歳とは思えぬシャウトでハイトーンボーカルを聴かせる。それにしても凄いな。声量が全然落ちていない。ロックミュージシャンが歳を喰うと、長年の喉への酷使と加齢から声が出なくなるのに、Sammyは衰えというものを一切感じさせなかった。
俺の席の左隣の人はオープニングからずっと立っていたが、俺の周りの人はみな着席してまったりとライブを楽しむ。ミュージシャンが歳を喰うのと同様にファンも歳を取る。2時間スタンディングが辛い世代の人達がファンに多いのだろう。無論、俺もその中の一人。

2曲目が終わったあたりでSammyは缶ビール(だと思う)を飲み始めた。リラックスしながら演奏というのが感じられて、これまた良い。Sammyは飲みかけの缶をアリーナ席に放り投げていた。ビールが服に掛かっただろうが、アリーナ最前列に陣取るような人達はコアなファンだろうから、むしろご褒美だろう。
Sammyはテキーラの大ボトルをラッパ飲みして客席を沸かせる。そして、ベーシストのマイケル・アンソニー(VAN HALENの元ベーシストでもあり、Sammyの長き良き相棒でもある)にもラッパ飲みをさせる。俺はあのテキーラのボトルの中身は水だと思っていた。ZZ TOPというロックバンドもライブ中にジャックダニエル(ウイスキー)をラッパ飲みするパフォーマンスがあるが、中身は紅茶らしい。さすがにウィスキーラッパ飲みしていたら、ライブの最後まで持たんよな。
ところが、Sammyは、テキーラをプラスチックコップに注いで、アリーナ最前列の人達に配っていた。となると、あれは本物のテキーラなのか。それとも観客が一口飲んで「なんだよ、水じゃねーか。騙されたー」というお遊びなのか。さて、どちらだろう。

アリーナの客席から日の丸の旗が投げ込まれる。するとSammyはそれを広げて一旦客席に見せてから、それを腰に巻く。これもお約束だ。彼は歌い終わると、旗にサインをして客席に投げ返す。ステージにちゃんとサイン用にペンが置いてあるのだ。Sammy、良い人である。
SammyはMCを始める。「日本でとても感心したことがあるんだ。客席からステージに物が投げ込まれるだろ。俺はサインして投げ返すんだけどさ。持ち主じゃない人に投げても、ちゃんと本当の持ち主まで渡るんだ。これがアメリカだと受け取った奴がそのまま盗っちゃうんだぜ」
俺はそれを聴いて大笑いした。アメリカ人の名誉のために言っておくと、平気で盗む奴もいるかもしれんが、ちゃんと本人に渡してくれる人もいる。割合として日本人のほうがマナーは良い、程度に思っておいたほうがいい。

SammyはDLR時代の曲も演奏してくれた。今回のツアーはSammy Hagarのソロツアーだ。自分が所属する前のVAN HALENの曲はやる必要も義務もない。だが、VAN HALENのファンがそういった過去の曲を求めていることも判っている。
コアなVAN HALENファンではないと先に書いたが、俺はこのライブに来て良かったとライブ途中で既に感じていた。それほどまでにバンドの演奏は良かったし、Sammyの歌は素晴らしかった。俺が一番好きな”Why Can’t This Be Love”も聴けたし、ラストに”Jump”から”When It’s Love”でフィナーレを迎えたのも非常に満足した。
”Jump”が流行っていた頃、俺は人生初のガールフレンドが出来て舞い上がっていたんだよなぁと懐かしい気持ちになる。あれはもう40年も前の話だ。その話は以前書いた。

Van Halenを聴いていた頃 - Some Were Born To Sing The Blues

その彼女も既におばあちゃんである。孫がいると言っていた。数か月前にメッセンジャーで遣り取りしたら「私はもう早期退職したよ」と書いてきた。確か、彼女は看護婦をしていたはずだ。

40年が過ぎても、Sammyは当時と変わらず未だにロックシンガーだ。俺は残念ながら、永遠に17歳の少年ではいられない。だが、心は今でも17歳のままだと書いたら、さすがに図々しいか。いや、みんなもきっと同じ気持ちだろ?