Some Were Born To Sing The Blues

Saxとジャズ、ピアノとブルース、ドラムとロックが好きなオッサンの日々の呟き

レッドでホットでチリペッパーな夜

先週の日曜のことだ。俺は相方と一緒に東京ドームに出掛けた。目的は勿論”Red Hot Chili Peppers”(通称、レッチリ)のライブを見る為。
コロナが蔓延してから、プロのライブからはずっとご無沙汰だった。そもそも外タレ(外国のバンド)が来日しなくなっていた。俺自身もすっかりライブを見ることが日常から遠退いている有様。
コロナ以後は、何度か友人知人のアマチュアミュージシャンのライブを見たくらい。

そもそも、見たくてもお気に入りの外国人ミュージシャンは全く来日しないし、国内ミュージシャンはほぼライブを自粛している状況。おまけに、よく考えると俺がライブを見たい日本人ミュージシャンは殆どいないんだよな。
と言ってはみたが、実はあまり積極的にライブを見なくなっている自分にも気付いていた。ロック系のライブはやはり、好きなミュージシャンの十八番の曲を一緒になってシャウトし、歌い、手拍子を取り、曲の最後に大声で叫びながら、大喝采をする。これだろう。
コロナの影響でマスクをしたままのライブ観戦てどうなんだろう…そう懐疑的になっている自分がいた。

去年の12月に偶然レッチリが来日することを知った。実は俺はレッチリはあまり詳しくない。アルバムも数枚しか聴いたことがない。それらのアルバムは相方の物だ。
相方は、レッチリのかなり緩いファン。アルバムも全て持っている訳ではない。それに彼女は初期のファンク色の強い頃の音楽性が好きだったのだろうと思う(俺の勝手な想像だけれど)。俺もレッチリは名前くらいは知っていたが、曲も数回程度聴いたくらい。無論、彼らの楽曲は素晴らしかったし、演奏もかなりの好みだった。チャド・スミス(ドラマー)のドラムは正確無比にタイトだし、フリー(ベーシスト)のベースがこのバンドの心臓なのは、アルバムを一枚聴けば、誰でも判る。

それほど俺がレッチリに嵌らなかった理由はなんだったのか。単純に俺がレッチリを聴いた時期が良くなかった。当時、付き合っていた相方の部屋に遊びに行って、「音楽でも聴こうか」とCDラックを漁る。彼女はファンク、ソウルが好きでそういったミュージシャンのCDが多く並んでいた。俺の好みのCDはあまりなかった。その中にレッチリがあった。何度か聴いてみた。
格好良いバンドであるのは間違いがない。 ベースがとにかく良い。このバンドはベースありきなんだなぁと初めて聴いた時に思った。
多分、数年早くレッチリを聴いていたら確実にファンになっていただろうと思う。

何故、俺がファンにならなかったか。答えは単純でその頃、俺はジャズに嵌り始めていたから。厳密に言うと、ジャズSaxと言ったほうが良いかもしれない。Saxを始めて間がなく、俺は「Saxを吹けるようになるには、やはり多くジャズを聴かないといかん」と自分に言い聞かせていた部分があるような気がする。
意図的にロックよりもジャズを選んで聴いていた節がある。今考えると、阿保だなあと思う。音楽なんて強制じゃない。好きな音楽を聴けば良いのである。当時、ロックを聴いていると、ジャズのテイストが身体に沁み込まない気がしていたのだ。
結果、ジャズのテイストが沁み付いたかと問われれば、「全然」と答えるより他ない。

相方に「2月にレッチリが来日するけど、ライブ観に行く?」と尋ねると二つ返事で「行く!」と返って来た。しょうがねえな、チケット2枚か。チケット1枚で2万円である。2人で4万か。洒落にならねえ。ま、しょうがあるまい。

そして日曜の午後、俺達は東京ドーム前にいた。既にドーム前の広場でレッチリのTシャツを着て宴会をしている人多数。不思議なのが、なんでバンドのライブに来ると、まるで自分もバンドのメンバーであるかのように謎にテンションが上がって盛り上がっている人が多いのだろうか、ということだ。
「いや、お前はレッチリじゃねえから」と言いたくなるくらいに、はじけている人が多い。通路で缶ビールをガバガバ飲んで、禁煙エリアで煙草を吸いまくったり。不良に憧れる高校生かよ。そう言いたくなる。
ライブが始まる前に、既に出来上がっている人が相当数いた。あれでライブちゃんと見られたのだろうか?…

ライブ開始は17時半から。17時過ぎに席に着く。17時半近くにトイレに行きたくなったので、男性用トイレに行くと煙草臭い。個室で吸ってやがったな。無論、ドーム内は全エリア禁煙である。トイレで煙草って不良に憧れる高校生かよ。
用を足していると、爆音がいきなり聴こえ始めた。「うそ、定刻に始まるんかい」ロックバンドの開演は10分程度遅れるのが当たり前である。油断していた。

慌てて席に戻り、初レッチリをじっくりと聴く。とにかくベースの音が凄い。東京ドームで外タレのライブは何度か見たが、ベースの音がここまでしっかり聴こえるバンドは初めてだ。
俺も下手くそながら、バンドでドラムを叩いている人間なので、チャド・スミスのドラミングに耳を傾けていた。「へー、4拍目でちょっと気持ちレイドバックさせてシンバル入れてるんだなー」なんてドラムを解析しつつ聴いていた。
だが、すぐにそういった聴き方は止めた。そんな風に聴いていると、バンド全体の音楽を楽しめない。とにかく格好良いなと思ったら、その曲そのものを楽しめばいい。

いかんせん、俺はレッチリのアルバムは数枚聴いただけ。新作も全然聴いていないし、ここ何年もレッチリ自身を聴いていない。この日、ライブ中に演奏された曲で知っていたのは3曲だけ。他は全て知らない初めて聴いた曲ばかり。
だからと言って全然退屈しない。
エモーショナルなギターソロに酔い、地の底を這うような重低音で疾走感あふれるベースに驚愕し、パワフルなドラム演奏を堪能した。ボーカル? ボーカルに関しては俺から言うことは特にない。

客席の中にはマスクを外して、叫んでいたり、口笛を吹いている者も何人かいた。ルール的にはアウトだけれども、マスクを外して声を出したくなる気持ちは判らんでもない(俺はマスクしてたけどね)。

やっぱりライブは良いな。マスクをしないで、大声で喉が枯れるまでシャウト出来るような状況が、早く来ると良いなと思う。