Some Were Born To Sing The Blues

Saxとジャズ、ピアノとブルース、ドラムとロックが好きなオッサンの日々の呟き

スマートフォン無しでは生きてはいけない

現代に生きていて、年寄り特有の「昭和のほうが良かった」などと言うつもりはない。昭和と令和はどちらが生き易いかというのは人によって判断基準が違うから、比べるだけ無意味だ。
ただ、俺が10代や20代の頃にスマートフォンが存在していたら、どうなっていたかなと思うことはたまにある。

20代前半の時に当時の恋人と「12時にいつもの駅で逢おう」と約束した。「いつもの駅」というのがクセモノだった。俺は、彼女をいつも見送る新宿駅だと解釈した。彼女は俺の住んでいる街の駅だと想定した。この2つの駅が隣駅同士くらいの距離なら問題なかったが、この2駅は片道で1時間弱かかった。
結局、お昼に約束をして、彼女に会えたのは夕方だったと記憶している。当時、スマホでなくても、携帯電話があれば1時間後には会えた。そういった経験を持つ人間からすれば「スマホがある時代のほうが便利だよなぁ」とは思う。
駅前の掲示板に「xyz」と書き込んでも、来てくれるのはシティ・ハンターだけである(判る人にしか判らないネタ)。

相方と東京に住んでいた頃の話だ。6年以上前になるだろう。相方とよく行く定食屋でランチを摂っていた。その店はセルフサービスでご飯のお替りが自由に出来る。
俺達が座った場所から、若いカップルのテーブルが見えた。「見ていた」というよりも、たまたま視界に入って来たという位置関係だった。男性が左手にスマホを持ったまま、食事中もずっとスマホを見ていた。左手が塞がっているので、当然犬食いになる。見た目がまず美しくない。というよりもマナー違反だ。
俺のようなオッサンからすると、「恋人と一緒に食事をするのに、ずっとスマホの画面を見たままなのか」と疑問が湧く。今時の若者事情の一端を垣間見た気がした。もしかすると、その男性がイレギュラーなだけで、食事中ずっとスマホを見ているほうが異常なのかもしれない。というか、異常であって欲しいが。
恋人と会話するのに倦むほど長い期間付き合っているのならともかく、普通は相手と楽しくお喋りしながら食事をしたいものなのではないだろうか。
それとも今の若者は、食事中にそれぞれスマホを見ているのがデフォルト(通常)なのか。

さらに驚いたのが、その男性はスマホを見たまま、彼女に空になった茶碗を突き出した。つまり「ご飯のお替り頼む」ということだ。俺は家では、ご飯のお替りは自分で対処するので、女性に「ご飯お替り」というのが奇異に映った。スマホを見たまま食事をし、ご飯のお替りはパートナーの女性に頼むという令和と昭和のハイブリッドだ。
せめて一言「ご飯お替りお願い」とでも言えばいいのに。席は離れていたが、彼の口が何かを発したようには見受けられなかった。彼はひたすらスマホの画面を凝視していた。

俺自身は、スマホ中毒ではないけれども、現代においてはスマホがなくては生きてはいけない時代だなと強く感じる。
先月、札幌に旅行した話を書いたが、その時に取った飛行機のチケット、ホテルの予約、全てペーパーレスだ。申し込みデータはスマートフォンの中にある。
飛行機のチェックインもスマホから出来る。機内の座席もスマホから予約済。羽田空港について、QRコードを表示させれば、それで機内まで行けるのである。予約表などをプリントアウトする必要がどこにもない。昔のように予約表を紙媒体で出力して、チェックインカウンターに向かわなくて良いのだ。

先日、サッカー観戦に出掛けた(俺は鹿島アントラーズのサポーターだ)。ネットからチケット予約し、チケット代金は当然カード引落し。試合当日そのままスタジアムに向かい、入り口ではスマホのQRが表示されている画面を見せて、QRコードを読み込んで貰うだけ。これで入場可能。なんてシンプルで簡単なのであろうか。試合はアントラーズの惨敗。馬鹿野郎、金返せ!

今はスマホさえあれば、ほぼ全てが事足りる。
俺はワクチン接種を3回済ませているが、その情報もスマホにある。ワクチン接種証明書のアプリをインストールしているからだ。
俺は、Suica(JRの交通系カード)はスマホに入れていないけれども、駅の自動改札でスマホをかざしている人を多く見かける。

本当にそのうち、財布を持ち歩いている人が馬鹿扱いされる時代が来るのであろう。
「今はスマホさえあれば、何でも対応可能だよ」とすら会話の端に上らなくなる日もくるかもしれない。その事実があまりにも当たり前過ぎる状況になっていて。

若者が恋人や結婚相手を探すのはマッチングアプリが主流のようだ。マッチングアプリを使って、ワンナイトの相手を探したという話も実際に当人から聴いたことがある。
スマホがあれば、恋人も見つかるのだ。無論、これはその人が色々な条件や資質を満たしていないと無理だろうけれど。

スマホに全てが集約され、スマホがないと生きていけない時代は本当に目の前まで来ている気がする。
それを否定するつもりもないし、「スマホや携帯(電話)がない頃のほうが良かった」と言うつもりはない。
ただ、俺にとってスマホはやはり、「ちょっと便利な暇つぶしツールの付いた電話に過ぎない」という意識が抜けない。こういう事を言っている辺り、俺は時代遅れの老人なのかもしれない。

でもさ。スマートフォンの画面に映った美人を見ているよりも、好きな女性の手を緊張しながら握るほうが、俺は好きだけどな。