Some Were Born To Sing The Blues

Saxとジャズ、ピアノとブルース、ドラムとロックが好きなオッサンの日々の呟き

一緒にバンドをやりませんか?

俺はとある「バンドメンバー募集サイト」にメンバー登録している。今までは、ドラマーとして登録していた。既にブルースバンドは再活動している(俺の担当はドラム)。となると、ドラマーとして登録している意味がない。ドラマーとしてバンドを掛け持ちするつもりはないからだ。
過去に何度か「一緒にやりませんか」というお誘いのメッセージが来たことはある。だから、バンドを組みたい人には有用なサイトなのだと思う。

そうだ、今度はテナーサックス奏者として登録しよう。プロフィール画像もドラムを叩いているものから、サックスを吹いているものに替えた。プロフィールも多少変えて、サックスについて言及するようにした。
そのサイトでサックス奏者募集を掲げているバンドを検索。1件、良さそうなバンドがあったので、メッセージを送った。だが、既にサックス奏者の申し込みがあったという。残念。こういったものは本当にタイミングだからなあ。仕方ない。f:id:somewereborntosingtheblues:20211219223603j:plain

ある日、そのサイトから「メッセージが来ています」とメールが届いた。内容を確認すると、以下のようなものだった。
『一緒にバンドをやりませんか。以下が音源です。xxxxx(YouTubeのURL)。よろしくお願いします』
俺は一応、YouTubeにアクセスしてそのバンドの演奏を聴いた。1曲だけだったのだが、ちょっとAORっぽい感じのムーディな楽曲。バンドの演奏レベルは高い。
次にそのメッセージを寄こした人のプロフィールにアクセス。年齢、性別とボーカル担当である事しか記載していない。このサイトのプロフィールページには好きな音楽のジャンルやお気に入りのミュージシャンを書く欄があるが空白。情報が少なすぎる。余計なことは書かないのがクールだと思っているのかな? それは余計なことじゃない。必要なことだぞ!
そのプロフィール欄から、その人が出しているメンバー募集のページに飛ぶ。
「サックス募集。互いの演奏を尊重出来るバンドだと思います。ジャンルはジャズ、ファンク、ソウル系」書いてあるのはこれだけだ。これもまた酷い。

何が酷いって、バンドの編成(ギターやベースやキーボードなど)が一切書いていない。練習場所も、練習頻度(月に何回とか何曜日にやるとか)の情報もない。どういった系統の音楽をバンドでやろうとしているのか、曲はカバーなのか、オリジナル中心なのか。曲はどういった形で完成させるのか、何も判らない。
曲はどういった形で完成させるのかというのは、非常に大事だ。譜面を準備して完全コピーに近いものを目指すのか、ラフなデモ音源があって、それを各メンバーで勝手にアレンジして、リハーサルで完成形にするのか。或いはモチーフ(曲の元ネタ)をスタジオに持ち込んで、そこでジャムセッション的に演奏して皆で曲を完成させるのか。そういったバンドをやっていく上での大事な前提が何も書いていない。

これでは判断がつかない。俺はしょうがないので「情報が少なすぎます。これでは判断出来ません」と返した。すると翌日に返信が来た。リアクションは早い。だが、返信内容を見て、がっくり来た。
『ヴォーカル、ギター、ベース、ドラムです。練習場所はxxxx。練習頻度は月に2回程度、土曜の午後から夕方。貴方のバンド加入の条件を教えて下さい』
溜息が出た。このメッセージを寄こした人は35歳、女性とプロフィールにあった。この人、過去に仕事をしたことがない人なのだろうか? 商品の値段も特性も何も教えずに「この商品買って下さい」と言われて買う客がいるだろうか。

まずバンドメンバーの年齢が書いていないので、同世代の人がいるのかいないのかが判らない。やはりバンドメンバー内での世代が全く違うと、どうしても好きな音楽や考え方に違いが出るので、あまりに離れているとバンドがやりづらい。
そして、このバンドはオリジナル中心なのか、カバーもやるのかそれすらも書いていない。好きなミュージシャンも書いていないから、どういった系統の音楽をやるのかも全くイメージ出来ない。ファンク、ソウルと書いていても、ある程度の好みを書いてくれないと、このバンドの方向性が見えない。ジャズと書かれていたとしても、B-BOPもあればフリージャズもある。一言で括れるジャンルなんてないのだ。ロックだって、ビートルズとB'zじゃ全然違う。そういうことだ。

バンドメンバー募集の話がピンと来ない人は、これを結婚相談所のプロフィールに置き換えてみれば、理解し易いと思う。
『35歳、男性。サラリーマン。年収500万円』これだけ書かれた情報で、貴女はその男性に会いたいと思うだろうか。
結婚したら共働きなのか、子供は何人欲しいのか、親と同居なのか別居なのか。趣味は何なのか、相手の女性に求めるものは? 将来はマンションや一軒家を購入したいのか、それとも賃貸でいくのか。そういった情報が何も書いていなかったら、貴女はその人に会って話をしてみようとは思わないだろう。

俺に一緒にバンドをやりませんかとメッセージを寄こした人は、必要な情報が何も書いていなかったのだ。俺が「判断出来ないから、もうちょっと情報をくれ」という意味の返信をしても、全く必要な追加情報がなかった。
逆の立場だったら、普通は判りそうなものだ。バンドにメンバーを誘おうと思ったら、ある程度の情報を出さなくては、判断の下しようがないことも。想像力が欠如しているにもほどがある。

先程、俺が申し込んだバンドは既に応募があったと書いた。そのバンドに応募する時も、俺は自分のサックス歴や、過去にバンドでこういった曲を吹いた、譜面がなくても対応可能だが、その場でアドリブとかはちょっと無理みたいな内容を書いて応募したのだ。音源があれば自分でサックスパートを考えて吹くことは出来る等等。また、練習可能な曜日やそのバンドの練習場所に対しては電車でこれくらいの時間で行けるので問題はないなどの、音楽以外の条件に関しても書いているのだ。

バンドは無論、音楽の方向性や楽器演奏の技量といった部分が大事なのは言うまでもないが、結局最後は人と人の付き合いというところが肝になる。互いの波長や相性が大事なのだ。
そしてまだ会ったこともない人に自分を(自分のバンドを)アピールするのなら、必要な情報を出さなくては、相手が会ってみよう、一緒に演奏してみようとはならない。

これはバンドに限った話じゃない。
「秘密が多いのね、素敵(ハートマーク)」なんていうのは、小説やドラマだけの世界だ。現実世界は互いに腹の裡を見せ合って、理解を深めていかなくては、その後も長く付き合っていこうとはならない。
相手が何を思うか、何を欲しているか、それはほんの少しの想像力を働かせれば判ること。逆の立場だったらどう思うか、それを考えれば全然難しい話じゃない。
それに思い至らない人というのは、優しさが足りないのだ、結局のところ。