Some Were Born To Sing The Blues

Saxとジャズ、ピアノとブルース、ドラムとロックが好きなオッサンの日々の呟き

スマホを拾っただけなのに

「あれ? スマホが落ちてるな」
朝、通勤で仕事場のビルに入る直前、駐輪場の横を通った時のことだ。放置されている自転車の下に、スマートフォンのケースがあるのに気付いた。
さすがに、駐輪場にスマホを捨てる奴はいないだろう。ケースだけだ、きっと。
午後になり、仕事が怠くなってきたので、ビルの周りを散歩しようとビルの外に出た。駐輪場の横を通ると、朝と同じくやはりスマホケースがそこにはある。ちょっと興味を惹かれて、ケースを拾い上げてみる。ケースだけではなかった。ケースを開くと、そこにはスマホがあった。試しに画面をタッチしてみると、ホーム画面に時刻が表示されている。ケースの蓋の内側にはカード類が収納される仕組みになっていて、Tポイントカードが見えた。他にも何か会社の連絡先一覧らしきメモも挟んである。

なるほど。つまりこれはスマホを落としたということだ。俺はスマホケースの蓋を閉めて、交番に向かった。ちなみにこのスマホを操作して個人情報を見ようとしたり、カード類を確かめたりということは一切していない。
別に人に読まれるblogに書いているから善人を気取っている訳じゃない。誰の物とも知れぬスマホの中身なんか見たいとは思わない。そんなものを見ても仕方がない。
唯一例外があるとしたら、このスマホの持ち主が仲間由紀恵ちゃんだった場合のみだ。たとえどんなパスワードロックが掛けてあろうが、俺はそのロックを掻い潜って、由紀恵ちゃんの個人情報を盗み見るだろう(犯罪です)。
余談だが、俺は過去に恋人のスマホ、携帯電話の中身を見た事もないし、見ようと思った事もない。ちなみに相方も俺のスマホを見たいと言ったことが一度もない。相方の場合は特殊能力があるから、俺が浮気でもしてたら、スマホ見なくても一発で判っちゃうんだけどね。

交番に入ると制服警官がいたので、スマホを掲げながら「落とし物です」と告げた。警官はメモ用紙のような物を俺に寄こしながら「名前と住所と連絡先をお願いします」と言ってくる。
奥から女性警官も出てきて「どちらで取得されました?」と尋ねてくるので「この通りの先にある***ビルの近辺です」と返す。たかだかスマホ1台の対応に警官2人は不要だろう。暇なのかな、この人達。警官が暇であるというのは平和の証なので、俺はそれを咎める気はないけれども。

次に男性警官に「取得物の権利を主張するか?」と確認されたので「放棄します」と即答した。現金だと1割貰えるというのは有名な話だが、スマホの場合だと定価の1割のキャッシュが請求出来るのだろうか。次に落とし主に貴方の連絡先等の情報を教えてもよいかと訊かれたので、当然これも却下。
男性警官に申請書のようなものを提示された。「この権利を放棄しますのところにレ点を入れて下さい。あと落とし主に貴方の個人情報を告げてもよいかの欄ですが、教えないのところにレ点を。で、ここに署名お願いします」
サインを終えて、俺は交番を後にした。f:id:somewereborntosingtheblues:20211116233551j:plain

多分だけれども、スマホを落とした人は酒に酔ってこの不始末をしでかしたのだと思う。何故なら、素面で落としたのなら、途中で必ず気づく。気づいた場合、そのままにして帰宅する筈がない。自分が通った経路を戻りながら探すだろう。そうすれば見つけるのは難しい話じゃない。
酔っていると、自分が失くしてはいけないものを失くしていても気付かない。俺も昔は酔って大切なものを沢山失くした、特に人の信頼という大切なものを(誰が上手いことを言えと言った? やかましーわ)

俺も昔は酔って携帯電話をよく失くした。トータルで6、7台は失くしているだろう。警察に届けられて手元に戻ってきたものもあれば、それっきりというのもある。あと運良くタクシー会社の営業所で保管してくれていたという場合もあった。
俺が人生で1番酒を飲んで泥酔していたのは30代の頃だが、当時はまだスマートフォンは世になかった。携帯電話の時代だ。あの頃、スマホがなくて本当に良かったと思う。スマホを失くしていたら、金銭的精神的ダメージが携帯電話とは比べ物にならない。
俺はおサイフケータイもしていないし、スマホにプリペイドカード的なアプリも入れていない。以前、ホリエモンという人が「これからの時代はスマホ1台あれば、これで全部出来ちゃうんですよ」と主張していた。クレジットカード、財布、プリペイドカードの役割をスマホひとつで出来るということだ。確かに色々なものを一つに集約出来るのは便利かもしれない。
だが、俺は怖くてそんな事は出来ない。過去に携帯電話を何度も失くした経験があるからだろうけれども、一極集中して、その一つが機能不全に陥ったらと考えると恐怖である。

また、財布は酒に酔った状態で出したり仕舞ったりすることはあまりない。出すのは支払いの時くらいだろう。それに比べてスマホは酔っていると、やたらといじる傾向にある。これは携帯電話時代の経験から判る。出し入れを頻繁に行えば失くす可能性も増大する。

スマートフォンを失くし、悪意ある人物に拾われた場合、損失がどれだけあるのか俺にはよく判らない。色々な機能を付加していればいるだけ、落とした時のダメージは大きい。スマホ内に人に見せてはいけない恋人の画像なんかを保持していたら、被害は自分1人では済まない。映画『スマホを落としただけなのに』が正しくそれだ。

本来、スマートフォンなんて人の生活をちょっとばかり便利にするただのツールなのに、気づくとこいつに振り回されて、支配されている感が否めない。歩きスマホが止められない馬鹿者どもは、まさしくスマホの奴隷だ。
マトリックスやターミネーターでは、未来の人間は機械に支配されていた。現代の俺達も同じかもしれない。