Some Were Born To Sing The Blues

Saxとジャズ、ピアノとブルース、ドラムとロックが好きなオッサンの日々の呟き

電化製品は最悪のタイミングで壊れる

新しい冷蔵庫を買った話は前に書いた。以前の冷蔵庫と体積(見た目上の大きさ)は殆ど変わらないのに、中の収容量は増えているようだ。冷凍室も、以前の冷蔵庫は1つだった。今のは3つもある。そのうちの1つは製氷室専門だ。
冷蔵庫が新しくなり、冷凍食品や野菜が大量に収納出来ることを実感したいのか、相方は「コストコに行きたい」と言う。コストコはアメリカのスーパーマーケット。会員制スーパーで、商品の1つ1つの数量が多い。サイズもでかい。

日曜の午前から、シェアカーで出掛ける。車でうちから30分くらいでコストコに着く。相方はさぁー買うぞオーラ全開だ。俺は大きなカートを押しながら、相方の買い物に付き合う。なんで女って買い物が好きなんだろう、その買うものの種別問わずに。
店は割と混んでいた。f:id:somewereborntosingtheblues:20210803011230j:plain

結構人が多いな、俺が言うと相方が返してきた。「みんな、自粛自粛で旅行も行けないじゃん。コストコに来て買い物するのが、1つのビッグイベントなんだよ!」なるほどな。その説は大いに説得力がある。
可愛い小鉢10個のセットが売っている。「ねえ、いくら?」俺は問われて、値札を見る。「うーん、と。1,000円だってさ。1万円じゃねえよな、うん。1,000円だ」
相方は速攻でそれをカートに入れる。つい最近、お皿を大量に買ったじゃねえか、そう思ったが無論それは言葉にはしない。10個で1,000円はお得だ。それに可愛い。1,000円で彼女の気分が良くなるのなら、それは黙って購入すべきだ。果たして、その小鉢に何を入れるのかは俺の知った事ではない。f:id:somewereborntosingtheblues:20210803011257j:plain

豚肉2キロが4,000円ちょっと。当たり前のように購入する。相方はそれを小分けにして冷凍庫で保存するつもりなのだ。冷凍室にまとめ買いした食材を入れるのが彼女のちょっとした喜びになっているのが判る。せっかく新しい冷蔵庫があるんだからな。使わないと勿体ないということだろう。

でかいサイズのトイレットペーパーを買い、大皿のペスカトーレを2つ、その他いろいろ(詳細は忘れた)。
「前回よりは(お金)掛かってないよね」相方が言う。前回(俺にとって初コストコ)は、トータルで23,000円も買い物をしたのだ。今回は精算したら、26,000円だった。前回よりも掛かってるじゃねーか。f:id:somewereborntosingtheblues:20210803011330j:plain

帰宅して、相方はさっき買った大量の肉を小分けにしてジプロックに詰めている。冷凍庫に仕舞うのだろう。キッチンで暑い、暑いと言いながら大量の肉と格闘する相方。俺は扇風機をセットしてやる。
と、ガタガタガタと扇風機が断末魔の悲鳴を上げ始めた。「あ、壊れた」

「あー、タイミング悪いなー。出掛ける前に壊れたら、車あったのに…」相方が言う。全くもってその通りだ。シェアカーは既に返却してしまった。出掛ける前に扇風機が壊れているのを知っていたら、シェアカーで電気屋に寄って来ることが出来たのだ。
だが、物事というのはそういったものだと思う。電化製品は1番壊れて欲しくないタイミングで壊れると相場が決まっているのだ。

うちから自転車で10分のところにホームセンターがある。そこには扇風機も売っている。俺は自転車で買ってくることにした。自転車で扇風機を買って持って帰って来るのは面倒だ。だが、無理な相談じゃない。
扇風機が壊れるタイミングと、シェアカーで出掛ける順番が入れ子になっていれば、こんな苦労はしなくて済んだ。だが、人生そんなもんだ。

ふと20代のある夜のことを思い出した。大学生の頃の話だ。俺の六畳一間のボロアパートには、友達以上恋人未満の女性がいた。俺が彼女に部屋に遊びに来ないかと誘い、彼女がOKをしたのだ。俺の誘いを受け入れたのだから、俺に対してある程度の好意があるのは間違いないだろう。これはさすがに自惚れじゃない。客観的に見て、誰だってそう思うし、そう判断するだろう。
酒は飲んでいたかな、ちょっと覚えていない。多分飲んでいただろう。2人でたわいのない話をしていた筈だ。もう内容は覚えていないけれど。
そして当然の話だが、俺としては彼女と友達よりもさらに一歩先の関係になりたいと思っていたのは想像に難くない。
その時だった。部屋の電話が鳴った。当時はスマホも携帯電話もない時代だ。固定電話を持っているのがちょっとしたステータス(どんなステータスだよ?)だった。

電話の主は、元恋人からだった。詳細は覚えていないけれども、内容としては「貴方と別れたのは間違いだった。やり直したい」というような話をしていた。そして、俺のアパートからそれほど遠くない場所にいた。元恋人は言葉にはしなかったけれども、「もし良かったら迎えに来て欲しい」というニュアンスを漂わせていた。
俺は「なんでこの夜なのかなぁ」と、タイミングの悪さを呪った。前の夜でも良い、次の夜でも良かった。でもこの夜じゃなかった。今、俺の部屋には俺に好意を持ってくれている女性がいるのだ。元恋人を迎えに行けるはずがない。
え? お前は元恋人に未練があったのかって? 正直に言おう。未練があった。元恋人と友達以上恋人未満の女性、どちらを選ぶ? そう神に問われたら、素直に「判りません」と答えていただろう。
当然の話だが、元恋人を迎えに行けるはずもない。そして、部屋にいる女性とも微妙な空気になってしまった。そりゃ、電話の雰囲気で彼女が何かを察したのは当然の話だ。

今思い返せば、元恋人からの電話があの夜で良かったのかもしれない。もし仮に元恋人とまた関係が中途半端に復活して、そして友達以上恋人未満の女性とも同時進行なんてしていたら、修羅場どころの騒ぎでは済まなかったろう。
そういう意味では、最悪のタイミングどころか、最上のタイミングだったのかもしれない。

物事がそのタイミングで起きるのには、必ず意味があり必定であるのだ。しかし、扇風機が壊れたタイミングはやはり最悪だと思う。f:id:somewereborntosingtheblues:20210803011415j:plain