Some Were Born To Sing The Blues

Saxとジャズ、ピアノとブルース、ドラムとロックが好きなオッサンの日々の呟き

『ずっと好きだった』なんて大嘘さ

10年程前に書いた文章をサルベージする事にした。サルベージというと格好良いが、ただの使いまわしである。なので、明らかに昔の歌に言及しているが、そこは勘弁して頂きたい。

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最近、斉藤和義さんが人気らしい。
俺の中で彼は『ずっと好きだった』という曲を歌ったミュージシャンという位置づけだ。それ以上でもそれ以下でもない。だから、ファンでもアンチでもない。ただ、俺がドラムを担当しているロックバンドで、ベースの人が「斉藤和義の曲が好きだから、チャンスがあればバンドで彼の曲をやりたい」みたいなことを過去に言っていた。それでちょっと気にかけていた頃に「ずっと好きだった」が流行った。
この歌を聴いた時から思っていた事がある。それを今日は書いてみたい。

この歌は、まるで初恋の女性にずっと秘めていた想いを語る青春のラブソングみたいなニュアンスだが、全然違うと思っている。これは、妻子持ちのイケメンが元同級生に不倫または一夜の恋を誘っているだけの、大人の男のいやらしい駆け引きを歌ったものなのだ。
注意)斉藤さんの歌詞は【】で引用する。

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さて、なぜ俺がそう思うか。まず、この歌の状況を整理してみよう。

この歌の主人公である男が、同窓会で久しぶりに元同級生の女性に会ったというシチュエーションであるのは間違いがない。そうでないと【この町を歩けば 蘇る16才】という歌詞の意味が通らない。つまり、16歳=高校生だ。【蘇る】と言っているのだから、今は当然もっと大人だ。
何故、高校生の頃の町に戻って来たか、普通は都会での暮らしを止めて故郷に戻ってきたか(実家で残りの人生を過ごす)、同窓会に参加したか、そのいずれかである。
他の理由は考えられない。正月や盆休みで実家に帰省、という可能性もある。だが、今回は昔好きだった彼女と再会しているのだ、実家に帰省はない。社会人がたまたま実家に帰省していたら、昔好きだった女性に偶然再会した? それはない。なぜなら歌詞に【話足りない気持ちは もう止められない、今夜みんな帰ったら もう一杯どう? 二人だけで】とある。つまり彼女と偶然再会した訳ではないのだ。
あらかじめ、セッティングされた場所で彼女と再会したのだ(だから、「みんな」がいる。元クラスメート達が)。ここの歌詞は明らかに同窓会を意味している。それ以外の意味を汲み取れる人がいたら、是非とも教えて頂きたい。

ここまでは別に良い。正直言って、昔好きだった同級生と、再会したら火がついたという形があっても、それは全然構わない。だが、【ずっと好きだった】は間違いなく嘘だ。
この歌の主人公である男は、高校生の時にこの彼女の事が好きだった。大好きだった。結婚したいとすら思ったかもしれない。それはいい。が、その後、この男は彼女の事なんか忘れていたに違いないのだ。
何故か?
上述したが、この男が彼女と良い感じだったのは高校生の頃。そしてその後、同窓会があるまで、この男は彼女に一切コンタクトを取っていないのだ。連絡していないから、【相変わらず綺麗だな】と言える。定期的に会っていれば、こんな言葉は出てこない。
この男が高校卒業後、大学に進み、大学で彼女を作る。そして大学時代に恋人と別れ、新しい彼女を作り…そうやって卒業して社会人になって…もし、本当にこのヒロインの事が好きだったら、「ああ、大学時代に別の女の子と付き合ったけど、やっぱりあれは違った。俺が本当に好きだったのは君だったんだ!」となって、この女性に会いに行って、告白している。

が、同窓会が開催されるまで、何もアクションを起こしていないのだ。となると、高校時代のこの女性の事は『昔、好きだった』程度なのだ。
そして、同窓会で昔気になった女に会ったら、だいぶに綺麗になってるもんだから、「ちょっとやらせてくれたら、儲けもんかな」程度でこの男は彼女を誘っているのだ。
確かに、『好きだった』のは事実だが、【ずっと好きだった】は嘘だ。『昔、好きだった』が事実だと思う。

はいはいはい。この主人公の男は誠実な男で、ずっとこの女性を(一途に)思っていた、という説を取りたい方がいるのですか? では、ちょっと確認しましょう。そんな一途な男って、恋愛に器用ですか? 不器用ですか? 不器用ですよね。そんな高倉健さんみたいな人が同窓会で【話足りない気持ちは もう止められない 今夜みんな帰ったら もう一杯どう? 二人だけで】なんて言えますか? 
どこをどう見ても、この男は昔いいなあって思った女とワンナイト・スタンド(一晩限りの恋愛)をやりたいだけなんですよ。上手くいったら、その後もだらだら不倫で楽しみたいと…
 
だから、この歌を青春ラブソングみたいに捉えるのは、やめたほうがよい。
そもそも、【ずっと好きだったんだぜ】なんていう男よりも『あの頃は全然気にならなかったけど、今のお前は滅茶苦茶魅力的だ』っていう男についていったほうが良いよ。
そのほうが真実だ。って、歌詞を勝手に解釈して、俺は何を言っているのだろうか。