Some Were Born To Sing The Blues

Saxとジャズ、ピアノとブルース、ドラムとロックが好きなオッサンの日々の呟き

東京で過ごす冬

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三年振りに東京で迎える冬。
札幌の厳しい冬を過ごして来たから、東京の冬なんて楽勝だ。そう思っていたのは大きな間違いだった。
とにかく寒い。

寒さの最大の理由は、やはり部屋の中が寒いという一言に尽きる。札幌時代は、二重サッシ、壁の厚いマンションに住んでいた。暖房器具も、やはり札幌仕様のガスによるセントラルヒーティング。札幌時代はTシャツの上に薄いパーカーを羽織っているだけで、冬を過ごす事が出来た。
今、ここ東京では木造の安アパートで暖房器具はエアコンのみ。部屋の中の暖かさが札幌時代とは雲泥の差である。先日などはあまりに寒かったので、部屋の中でダウンを着ていたくらいである(冗談ではない、本当の話)。

勿論、東京は12月になっても雪は降らないし、凍った道で転倒する恐れもなく歩ける。そういった点では有難い。相方と毎朝、電話をして互いの生存確認をしているのだが、相方が電話で必ず言うのが「朝起きたら、真っ白で雪積もってた。昨日は溶けてたのになー」である。札幌では毎日のように雪が降り、そして溶けたと思うと又降る。これの繰り返しだ。
そして、12月後半から4月上旬までは、雪が溶ける事なく、降り積もっていくのだ。

俺だって、一年前まではそういった場所で暮らしていたのだ。12月になると大通公園(札幌ゆきまつりをやる場所)には、クリスマスのイルミネーションが輝くようになる。初めて見た時は、物凄く複雑な気分になったものだった。
というのも、綺麗だったのだが、「ああ、ここに相方がいてくれたらなあ。きっともっと楽しめるのに」と思ったからだ。大通公園のイルミネーションを見ているのは、カップルや友人同士ばかりである。たった一人でイルミネーションを見ているオッサンなんて俺くらいだ。
何しろ、札幌に行って一か月経っていなかったからね。友達もいなかった。
そして今年の冬は、札幌最初の冬と逆になり、俺が東京で相方が札幌にいる。相方は相方で、きっと札幌の友人達と大通公園のイルミネーションを見に行く事だろう。

俺は基本的に夏のほうが冬よりも好きだ。それは単純に寒さが苦手というのもある。俺が若かった頃、自分よりもずっと年上の人が「寒さは防寒すればなんとかなる。でも夏の暑さは耐えられない」とよく言っていた。今となるとその言葉の意味が判る。
俺も今年の夏は東京の灼熱地獄で死にそうになった。ただ、今年の夏が辛かったのは、東京の暑さと仕事の苦しさのダブル攻撃だったからかもしれない。

東京で最後に相方と大晦日を過ごしたのは、2015年だ。あの時は「男はつらいよ」で有名な柴又帝釈天に初詣に行った。寒かったから、熱燗を飲んだような記憶がある(当時はまだ相方は俺の飲酒を許してくれていたのだ)。
そして、今年は相方が大晦日に東京にやって来る。最初は俺が札幌に行こうかと思っていたのだ。そうしたら相方が「いや、夫が札幌来るよりも、私が東京に行くよ! 札幌来ても雪で何処にも行けないしさ」と言う。相方の魂胆は判っている。久しぶりに東京に来て遊びたいのだ。何しろ相方は「札幌は物が何もないなー」と札幌市民を敵に回すような事を平気で言う奴だから。
俺の私見を言わせて貰えば、札幌は東京と比べて遜色はない。ただ、残念な事に楽器屋の数が少ないのと、楽器屋のある場所が一極に集中しているという欠点はある。俺の不満はそれくらいだ。
それに東京よりもスタジオ代金は安いし、東京よりも空いている。

三回、札幌の冬を経験して思ったのは、昔の人はよく蝦夷に移り住もうと思ったなぁという事だ。住宅事情や暖房設備は今よりも明らかに劣っていただろう。昔のほうがずっと寒かった筈だ。この極寒の地で冬を越せなかった人も多かったのではないだろうか。だが、今の札幌は住宅事情も良くなっているし、地下歩道も整備されている。冬でもそれほど不便な訳じゃない。
それに、あれほどの人口密度の高い東京で暮らすよりも、札幌でゆったりと暮らすほうが、よっぽど人間らしい生活は送れる。
俺が札幌で暮らしたのは、ほんの二年半だ。東京では二十数年暮らし、そして今も暮らしている。だが、どう考えても札幌の生活のほうが、東京の暮らしよりも充実していたし、心も穏やかでいられた。

相方が今俺の側に居ないという事も影響してはいるだろう、多分。東京で一人で暮らすという事は、それほどまでに、ストレスを溜めるという証明でもある。

俺としては、久しぶりの札幌の雪景色を見たいという希望もあったし、札幌時代に知り合った人達と再会したいなあという気持ちもあった。だが、相方が東京に来たいというのなら、それを優先しなくてはなるまい。
相方が「東京行ったら、お雑煮くらいは作ってあげるよ」と言う。となれば、それは実に半年振りの相方の手料理ということになる。

問題は、東京のアパートには、鍋もまな板もお椀も何も無いのだ。
ま、なんとかなるか。この半年、それら無しでやってきたのだから。