Some Were Born To Sing The Blues

Saxとジャズ、ピアノとブルース、ドラムとロックが好きなオッサンの日々の呟き

50の夜(15の夜+35年)

あまりにも昔の事なので詳細は忘れたが、16歳か17歳の頃、家出をしようと思った事があった。

当時、父親と折り合いが悪く、「こんなオヤジの下で高校卒業まで面倒を見て貰うのはご免だ。俺は独りで生きていくぜ」と決心したのだ。だが、具体的な計画は何もなかった。群馬の片田舎で暮らす少年にそんな知恵なぞ有ろう筈がない。
精々、「東京へ出ればなんとかなるだろう」くらいに思っていたのではないか。
結局、家出は決行されなかった。
何故かと言うと、家出を決意した夜に思い出したのだ。「あ、来週は俺の好きな女優の出る二時間ドラマがあるんだった。それ見るまでは家出は出来ないな」
馬鹿である。当時は今みたいにケーブルTVやネットがなかったから、一度見逃すと又見るのが難しかったのだ。結局、翌週まで家にいたら、家出する気持ちが雲散霧消していた。

家出しなかったのは、その女優さんのお蔭かもしれない。尤も、家出したところで、計画も金も何もなかったのだから、どうせ二、三日でしょんぼりして家に帰ったであろう事は想像に難くない。

尾崎豊の歌に「15の夜」という曲がある。1960年代生まれの人間なら、好き嫌いに係りなく、何度か聴いた事があるかもしれない。この歌は悩む十代の心情を描いている。その中に「仲間達は今夜家出の計画を立てる」という歌詞がある。
ああ、正しく、それだなあと思う。今俺が「家を出たい」と思ったら、それは「家出」じゃなくて「失踪」だけどな。

と、唐突になんで尾崎豊の話(というか、家出の話?)をしたかと言うと、尾崎豊のバンドでギターを弾いていた江口正祥さんとセッションをしてきたからだ(10/08の事だ)。

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以前も彼とはセッションをさせて貰った事がある。その時は、アコースティック・セッションだったので、二人ともアコースティック・ギターを演奏した。俺の下手なギターとヴォーカルに江口さんのギターを合わせて貰った。至高の体験だった。

somewereborntosingtheblues.hatenablog.com今回は、フルバンドセッション。そして俺の担当はサックス。サックスはギター、ベース、ドラムと比べて演奏する楽曲が限定される。
よって、その江口さんとのセッションは、全部で20曲弱演奏があったが、俺が参加したのは以下の4曲。
・TIME AFTER TIME(CYINDI LAUPER)
・昴(谷村新司
・SIR DUKE(STEVIE WONDER)
・15の夜(尾崎豊

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そう、なんという驚き。尾崎豊の15の夜を尾崎豊のバンドでギターを弾いていた人とセッション出来るのだ。これはある意味、物凄く贅沢な事。

勿論、他の3曲も非常に楽しかった。カラオケボックスに土日篭って、トータルで12時間くらい練習した。すいません、嘘つきました。二日トータルで12時間ほどカラオケボックスにはいたけど、練習してたのは多分8、9時間くらいだろう。ちんたらやってたからな。

15の夜はイントロのサックスはある程度コピーした。間奏とアウトローの二回サックスソロがあるのだが、さすがに二回も吹くだけのネタがない(ソロはそもそもコピーする気がなかったので、アドリブでやるつもりだった)。
当日、ステージに上がった時に江口さんに「アウトローのソロお願いしてもいいですか?」と訊いて快く承諾して貰った。

あくまでもセッションなので、その場で楽しくやれれば良いのである。「楽しくやろうよ」が江口さんの言葉でもある。
実際、ソロは上手く吹けたとは言い難いが、俺は充分に楽しんだ。
音楽なんて、楽しんだ者勝ちだ。

あの10代の日、もし家出をしていたら…、札幌で50代になってからサックスを吹いている事は、なかったかもしれないな。