Some Were Born To Sing The Blues

Saxとジャズ、ピアノとブルース、ドラムとロックが好きなオッサンの日々の呟き

ピアノはサックスのように上手くはいかない…

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二週間程前に、サックスのプレ発表会があった事をBlogに書いた。そして、自分自身の中では、そこでの演奏はかなり満足のいく代物だった。
そして、先週の日曜、今度はピアノのプレ発表会があった。正直、ちょっとピアノを、というよりも人前での演奏を舐めていた。過去、サックスでは多分20回以上、人前で演奏した経験があり、ギターやベース、ドラムでバンドのライブを経験した事も何度もあった。つまり本番での経験値はそこそこあるつもりだった。
だから、ピアノの経験が俺とほぼ一緒で一年程度(俺はピアノを始めて丁度一年)の人に比べても、場慣れしているという自負があった。
とんでもない間違いだった。調子に乗っていると痛い目に遇うという事をすっかり忘れていた。よく考えてみれば、いや良く考えなくても、俺の人生は調子に乗っては失敗し、落ち込んで反省し、そして反省を忘れてまた調子に乗って失敗し…それの繰り返しだ。
全く進歩という奴がない。

日曜日、プレ発表会は午後二時スタート。家を一時に出れば充分に間に合う。途中で軽く食事をしてから発表会の場に行けばいい、そう考えていた。それ自体は間違いじゃない。
午前中、最後の確認をしよう。そう思って曲を二回通した。ちなみにやる曲は「LET IT BE」をブルースアレンジにしての弾き語りだ。本当は弾き語りじゃなくて、ピアノソロ全編をやりたいのだが、腕が足りなくてピアノだけじゃ、一曲持たないから仕方ない。
二回通したが、特に問題はなかった。これは本番も楽勝じゃね? と俺は相変わらず調子に乗っていた。

家を一時過ぎに出て、地下鉄に乗った瞬間だった。突然それはやってきた。
「あれ? イントロ、どうやって弾くんだっけか…」
何の脈絡もなくイントロを考えてしまったのが失敗だった。それから何度頭の中でイントロを思い出そうとしても、さっぱり指使いが浮かんでこない。
食事を済ませ、そのまま会場へ。頭の中にずっと「あれー、イントロどうやって弾くんだっけかなー」という疑問符が浮かんでいたが解消されないままだった。
本番前に、ピアノを触って確認する事が出来ればまた違ったのだろうけど、そういう訳にもいかない。

会が始まり、自分の順番が来た。グランドピアノの前に座り、鍵盤に指を置く。当然一番最初の指のポジションは判っている。が、最初の音を弾いた次に何を弾くかが浮かんでこない。こういった時、慣れている人は勝手に指が動くのだろうけど、俺の場合はそこまでの経験値がまだない。また、今回の曲に関しては譜面がないので、譜面を見て音を確認するという事も出来ない。
「LET IT BE」のブルースアレンジのピアノ楽譜は存在する。が、今回は弾き語り用にそれを元に俺と先生でアレンジを作ったので、俺が演奏すべきものは俺の頭の中にしかない(厳密に言うと、先生の頭の中にもあるけど)。

なんとかなるかもしれん、と弾いてみたら、普段弾いていない音が出て来た。俺は何を弾いているんだろう、次に弾くべきは何の音なんだろう、自問した。
答えは出ない。
後ろから先生が「もう一度初めからいきましょう!」と声を掛けてくれたので、再度やり直し。こういった露骨な失敗をしてもやり直せるのが「プレ発表会」の良いところだ。来月の本番じゃ、こうはいかない。
そして二回目。またやはり自分が何を弾けばいいのか、迷子になった。もう、駄目だ。こりゃ。俺は絶望した。
「先生、何弾いていいか判らん」
俺は素直に先生に向かって白旗を上げた(上げる相手が違う)。先生が「深呼吸しましょう」と言ってくれたので、ちょっとピアノから手を離して、腕をぐるぐる回す。
三回目、やっぱり駄目だった。正しい音が何なのか、さっぱり判らない。これは何度やっても一緒だな、そう思ったので、出鱈目なイントロを諦めて、無理矢理歌い始めた。
とりあえず、歌い出せば、なんとかなるはずだ。

そして、何とか歌い終わった。アウトロー(エンディング)も、グダグダになりながら終わった。普段、家で弾いている時は「おっと、ちょっと走ってる(テンポが早くなっている)な、テンポを落とそう」とか「ここから、ピアノと歌を強めにして迫力を出そう」とか考えながら演奏出来た。だが、本番は違った。
見事なまでに頭真っ白状態。自分が何をやっているのか、さっぱり判らなかった。
サックスやバンドのライブ経験なんか、何の役にも立たなかった。というか、全くの別物だった。

会員全員の演奏が終わった後は、会場でケーキと珈琲のお茶会タイム。20人弱の参加者で二つのテーブルが自然と男性会員と女性会員に分かれてしまったので(別に合コンじゃないからねえ)、男性会員の人達と話をした。
みな、初対面だったのだけれど、割といい感じで話をする事が出来た。知人を作るという狙いが図らずも実践出来た。

俺以外の男性会員もみな譜面を見ない人ばかりだったので、「一度失敗すると、その後なかなか立て直せない。指の形で覚えてるから、間違えると何処で軌道修正していいのか判らない」という事だった。
みんな、同じなんだなあとちょっとばかり安心した。

そして帰宅してから、試しに「LET IT BE」を弾いてみたら、すんなり弾けた。なんだったんだ、あれは一体?
ま、今回が「プレ」だった事に感謝しよう。
本番の発表会までは、まだ十日程ある。そしてこの失敗の悔しさはこの曲を弾く事でしか晴らせない。もう一度イントロを確認だ。そして、4小節しか弾いてないソロは8小節にしよう。倍の長さにするのだ。いまさら、ソロを長くして大丈夫か?と問われれば、大丈夫な訳がない!としか答えようがない。
失敗する可能性が高い。だが、やるのだ。

どうせ一度完膚なきまでに失敗したのだ。失敗の数が増える事なんて、なんてことない。それよりも自分を納得せる事のほうが大事だ。
こうやって、失敗してんのに調子づいて、さらに傷を悪化させるのが俺の常套なのである。ま、なんとかなるさ、きっと。