Some Were Born To Sing The Blues

Saxとジャズ、ピアノとブルース、ドラムとロックが好きなオッサンの日々の呟き

ニナリッチとマルボロ・ライト

ふと思い出したので、せっかくなので書いておこう。

 20代前半の頃に、随分と大人の女性と交際していた時期がある。当時勤めていた会社の先輩だった。後に上司と部下の関係になったが。年齢の差が一桁じゃ収まらなかった。

 当時23歳くらいだった。24歳になろうとしていた頃かもしれない。さすがに20年以上前の話なんで、あまりよく覚えていない。仕事を一緒にして、残業適当に切り上げて酒を一緒に飲みに行った。彼女から今日はもうこの辺にして、飲みに行こうか」と誘われたのだ、多分。この辺りは記憶にない。もしかすると俺が彼女を誘ったのかもしれない。だが、当時20代前半だった自分彼女を誘えたとは思えない。そんな勇気はなかった。だからきっと彼女から誘ってくれたのだろう。ただ二人きりで飲んだ初めての機会だったので、緊張していた部分はあった。

 そして二人で飲んで軽く酔って付き合い始めた。明確な言葉はなかった。ただ彼女は、俺が彼女の事を好きなのは判っていただろうし、俺も彼女が俺の事を好きでいてくれるのは、言葉にせずとも判った。

 世間一般の男と女が付き合っただけの話だ。マイノリティな部分は、彼女自分よりもずっと歳上だった事くらいか。それでも彼女といると楽しかったし、色々と教えて貰った。まだ俺が若かったから、至らない部分が沢山あった。

 正直、セックス経験値も低かったから、最初の頃は彼女を満足させるには至らなかった(まるで今は経験値が豊富みたいな書き方だが、今だって経験値は低いよ)。随分とがっかりさせた事もあった。

 俺自身が背伸びしていた。どうやったら、大人の男として認めて貰えるのか、そればかり考えて空回りしていた。でも、それは逆の意味で向こうも一緒だったようで「貴方にはもっと若い女の子のほうがいいんじゃない」と何度も言われた。それが元で喧嘩になった事も数えきれない。「私みたいなおばさんと付き合う事ないじゃん。貴方はいくらでも若い子を選べるでしょ」と…。

 判ってねーなー、歳とか関係ねえんだよ、俺はお前がいいんだよ、そう何度も言った。最初の1年くらいは彼女名前をさん付けだった。彼女も俺のファーストネームを君づけだった。どこかのタイミングで、俺ははるかに歳上の彼女呼び捨てにするようになり、彼女は俺の名前に君をつけることをやめた。なんのキッカケがあったのかは思い出せない。

 初めて彼女の身体に触れた時、とても良い匂いがした。香水の匂いだ、とは判ったが、具体的にそれが何なのかは判らなかった。後に彼女にそれが「ニナ・リッチであることを教えて貰った。彼女と付き合い始めてから半年くらい後になって、デパート化粧品売場に行った。売り子さんに「ニナ・リッチ香水下さい」と言うと「香水コロンとありますけど…」、「違いってなんですか?」「香水のほうが、コロンよりも匂いが強いことかしら」と言われたのを昨日の事のように思い出す。結局、どっちを買ってプレゼントしたんだっけかな?

 そして彼女のハンドバッグの中にマルボロライトがあったのも驚きだった。「あ、そうか。煙草吸うんだ…」と。彼女が物憂げにマルボロライトを吸う姿を見る度に「俺は彼女の求める大人の男になれているんだろうか?」と自問した。

 あれから随分の時が流れた。もう俺の横にニナ・リッチ香水をつけ、マルボロライトを吸う女性はいない。それでも、時々マルボロライト香水CMを見ると、彼女の事を思い出す。

 一緒になる事は叶わなかったが、それが運命だ。誰もが、そういったモノを抱えて生きていくのだろう。それは自分も例外じゃない。そして、彼女と別れたから、今の自分があるのだ。感謝の念こそあれ、他に思う事はない。互いに幸せであれば良いと思う。

 

 ニナリッチマルボロライトは、いつも自分に若い日々を甦らせる。

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