Some Were Born To Sing The Blues

Saxとジャズ、ピアノとブルース、ドラムとロックが好きなオッサンの日々の呟き

てんやの天丼が苦手だった

つい先週、てんやの天丼を食べた。テレビを見ていたら、美味そうな天丼が映ったのだ。昼食をどうしようか考えていた俺と相方は「美味い天丼食べたいねー」と互いにうなずき合った。だが、問題はうちの近所には天麩羅屋がない。いや、あるのかもしれないが、知らない。天麩羅は嫌いじゃないが、この歳になると積極的に食べる物でもなくなって来るし。

食べログで調べてみたが、なかなか良さそうな店が見つからない。だったら、蕎麦屋に入って天麩羅蕎麦を食べればよいんじゃないか、という話になった。蕎麦屋なら家から歩いて1分のところにもある(ここは、不味い)。駅近くにも蕎麦屋がある。なら、そこに行こうという話になった。駅まで行くと、「てんや」を発見した。

ああ、そうだ。天麩羅と言えば、てんやがあるじゃないか。ずっと昔から(俺がこの街に住み始める前から、)駅前にはてんやがあった。どうやら、無意識にてんやの事を忘れていたらしい。

てんやの天丼を最後に食べたのは18年前だ。まだ20代だった。思い出した。なぜこんなにも長い間、てんやを避けていたのか。てんやの天丼が不味い訳じゃない。いやコスパの観点からいけば、充分にいや結構美味い天丼だと思う。だが、長い間、喰う気になれなかった。

 

当時俺は28歳くらいだったか。今はもう倒産し、社長も亡くなったある会社に勤めていた。バブルがはじけて随分たったが状況は良くならず、会社は左前だった。

社長がとある仕事を受注してきた。因みに俺の仕事は当時はプログラマー。設計書をもとにプログラムを作る仕事。納期を確認したら、一ヶ月後。で、作業量を確認したら、とても一ヶ月で終わる量じゃない。3人でやる仕事量だった。なぜそれを俺一人でやったか。単純な話、理由は2つだった。一つは、3人も人が確保出来なかった、そして二つ目の理由は3人でやると会社の儲けが出ないから。

仕方ないので、納期から逆算してスケジュールを引いた。土日全部出勤、毎日終電まで仕事。これが大前提。それでも終わるか判らない。

とにかく仕方ないので腹をくくって、仕事を始めた。

最初の1週間はまだ終電で帰った。帰る余裕があった。そして2週目となり、家に帰るのは止めた。家までの往復2時間が勿体なかったからだ。会社から徒歩15分のサウナに泊まる事にした。サウナに泊まれば、差分の往復時間の1時間半が仕事に充てられる。また、終電を気にしなくて良いから、深夜の2時とかまで仕事が出来る。このころの唯一の楽しみが深夜にサウナに入って寝る前に飲む1本の瓶ビールだった。無論、本当はもっと酒を飲みたかったが、翌日も山のように仕事が控えているから、1本だけにした。それに深夜まで仕事をしてヘロヘロだし、疲れているので、ビール1本ですぐに眠る事が出来た。

3週目の日曜日、どうしても身体がいう事を効かず、この日だけ休んだ。この一ヶ月で休んだのはその日だけ。だから、その月の労働日数は30日だった。

最終週は追い込み。ついに会社の床に段ボールを敷いて寝るようになった。もうブラック企業の見本みたいなもんだ。でも、当時はそんな事全然考えなかったな。まあ、仕事をサポートしてくれる同僚がいたからなあ、肉体的には相当しんどかったが、精神的には折れてはいなかったな。

で、なんとか納品の日。納品が朝の9時なんだが、ぎりぎりの8時半くらいまで、システムの動作確認テストを行ってた記憶がある。納品する会社がうちの会社から徒歩10分くらいだったんだよね。だから、ほんとぎりぎりまで仕事やってた。

ずっと会社に寝泊まりしてるから、恰好がトレーナーにジーンズ。当時は今みたいにビジネスカジュアルなんてなかったから、みんなスーツにネクタイ。納品先の会社の男性社員も皆きちんとスーツ着てた。そこへ無精髭にトレーナーとジーンズで納品物を届ける俺。向うの社員も俺がぎりぎりな仕事をしてたのは判っただろう(なんていっても同業者だしね)。

納品終わって会社帰る途中で喫茶店だか定食屋だかに寄って飲んだビールが美味かったのをよく覚えてる。サッポロ黒ラベルが出て来たんだよなあ。あれ以来、ビールはサッポロ派なんだよね。

あの月は結局トータルで400時間くらい働いた(笑)休みは1日。さすがに一ヶ月限定だから出来た話だ。こんな仕事を恒常的にやれって言われたら、身体の前に心が壊れちゃう。

で、だ。何の話だっけ。そうそう、てんやの天丼だよ。当時の会社の横にてんやがあったのだ。この仕事をしてる時はとにかく時間が惜しかったから、毎日晩御飯がてんやの天丼だった。正直気分転換に他の店にたまには行こうって考えもなかった。

とにかく仕事、仕事。だから晩御飯は腹が膨れればいい、って感じだった。当時は今程至るところにコンビニがなかったからね。つまり俺はほぼ毎日一ヶ月間、晩御飯にてんやの天丼を喰い続けたのだ。さすがに最後のほうはうんざりした。

で、もうてんやの天丼は暫く喰いたくないとなって、それが18年にも及んだ訳だ。以上の事からも、てんやに非は一切ない。俺の個人的な理由によるものだ。

無論、18年振りに食べた天丼は、大変おいしゅうございました。

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