Some Were Born To Sing The Blues

Saxとジャズ、ピアノとブルース、ドラムとロックが好きなオッサンの日々の呟き

スペイン~モロッコ旅行7 雨のモロッコ、ヘラクレスの洞窟を観に行く

タンジェ(モロッコ)二日目の朝。そして今日が実質、タンジェの最終日となる。明日は朝の便でバルセロナへ向かうのだ。

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俺達は今回の旅行で最終日はタンジェで過ごさずに、バルセロナで一泊する事にしていた。
何故かというと、モロッコから日本へ帰るのはフライト時間がハード過ぎるというのが理由の一つ。そしてもう一つは、前回バルセロナへ行った時に、グエル邸(著名なガウディ建築の一つだ)を見逃していたから、見たかったのだ(これは俺達が電車を乗り違えた為)。
今回の旅行は、スタートから台風でスケジュールが狂うなど、過去に体験したことのないトラブルに見舞われた。そして旅行最終日も暗雲が立ち込めていた。バルセロナカタルーニャ独立運動の影響でデモやストライキが発生しており、旅行危険区域状態になっていたのであった。俺達は外務省の「危険情報発信メール」みたいな奴に登録しておいたので、前日の夜にその案内メールが届いていた。
相方が言う。
「ヤバいよ。バルセロナカタルーニャ独立のデモと、公共機関のストやってるみたい。私達がバルセロナに行く日曜に丁度ぶち当たるかもしれない」
俺は今回の旅行は最初から躓いたからなあ、最後もそうなるのかなとちょっと達観した気分でいた。いや、スタートで酷い目に遭ったのだから、最後は許されるだろうという気分と、最初が駄目だから最後も駄目かもという気分が半々だった。正直言えば、なるようにしかならんというのが本音。今更ジタバタしても意味がないのだ。
相方はさらに悲壮な決意を固める。「空港がデモの被害に遭わなくてもさ、公共のバスや電車動かなかったら、ホテルまで行けない。そしたら最悪、空港で一日過ごす羽目になる。水とかお菓子買っておこうか」
そういった場合は、さすがに水くらいは空港で貰えるような気もしたが、日本ならいざ知らず、スペインだからな。その辺りの保証はない。

タンジェは今日は朝から雨。もう雨季に入っているからなあ。昨日と同じようにテラスで朝食。食事内容は昨日と同じ。テラスは屋根が付いているが、風が吹き込んで来る。黒人の女性スタッフが「大丈夫? もっと中に入る?」とテーブルを動かしてくれようとする。ギリギリで雨には濡れなかったので、OK大丈夫だよと彼女に言う。この娘は笑顔も可愛くて、非常に癒された。写真撮っておけば良かった(笑)

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相方は、バルセロナの様子が気になるのか、すっかり気分がダウンしている。おまけに雨だから、食事が済んでも出掛けるという訳にはいかない。日本と違って、雨季でも雨は一時間も待てば止む。日本の梅雨みたいに一日中降っているという事はまずない。
食事を終えて部屋に戻り、二人してベッドに寝っ転がったりソファで休んだりしながら、スマホをいじる。バルセロナのデモ/ストの情報、タンジェの観光情報の両方を調べているようだった。俺は今更慌てても仕方ねえと、普通にネット三昧していた。
そうやって二時間近く、部屋でダラダラしていた。時間は11時近くになろうとしている。せっかくモロッコに来たのにリヤド(民宿)の部屋で過ごすのも勿体ない気もしたが、相方は足怪我してるし、無理して動く必要もない。こういった海外で無作為に過ごすというのも、ある意味贅沢だ。
バルセロナ、ストとかデモは今日やるみたい。運が良ければ、明日(俺達がバルセロナに行く日)は回避出来るかも…」
多少は、俺達にも運が向いて来たような気もしなくもない。
「あと、タンジェは特に見る場所はもうない感じだねえ。観光スポットとか特にないし。どうしようか」
バルセロナの危機が回避出来そうな雰囲気になったのか、相方が多少はポジティブな事を言う。まあ、ずっと部屋にいても仕方ない。それに雨も止んだ。じゃあ、昨日と同じように適当に街を歩き回ろうかとなった。

昨日とは違うルートを歩く。とは言っても、あくまで感覚的なものだ。昨日同様、ちょっと歩いていると、すぐに自分がどこを歩いているか判らなくなるのが、モロッコの旧市街の特徴だ。

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適当に歩き回っていると、また中心地の広場に来た。昨日は気付かなかったのだけれども、どうやら観光バスがあるらしい。俺達が徒歩で行けるところは行ってしまったし、こういったものに乗るのも良いかもしれない。

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「これで観光したら、良い感じで時間が潰れるかもねー」と相方は言う。二人でバス停の前で待つ。30分以上待つが一向にバスはやってこない。「全然来ないねー」と俺と相方はいい加減にイライラしてくる。するとそこへ「ボランティアスタッフ」みたいなベストを着たおじいさんが「バスなら30分で来るよ」と言う。それを信じてさらに待つが全然来ない。多分、一時間近く、ぼぉっと待っていたのではないだろうか(笑)

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「もう来ないんじゃない。諦めようか」相方が言うので、「じゃ、その辺歩くか」と歩き出す。なんか地元民御用達みたいな店が多数あって、雑多な感じが良いのだなあ。

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と、諦めたら、そこにバスがやってきた。人生ってこういうパターン多くないか?
料金も所要時間も一切判らないのだけれども、とりあえず乗ってみようと観光バスに乗り込む。運転手に「チケット持ってないんだけど、ここで買える?」と訊くと、パンフレットみたいなものを呉れた。「料金は後払いだ。あと、このバスはルート1だけど、ルート2もある。両方乗るかどうかは後で決めてくれ」と。取りあえず乗り込む。
相方が足を怪我しているから、バスで観光出来るというのは、ある意味正解かもしれない。

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貰ったパンフレットを見ると、俺達が乗っているルート1は街の中を走り回るルート。で、こっちは正直言うとおまけみたいなコースであまり有難味がない。ただ、徒歩ではとても行けないような場所まで行ってくれたので、それはそれで楽しかった。バスの中から見た景色を少々載せておこう。

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なんで海って見てるだけで楽しくなったり、癒されたりするのかなあ(それって俺だけ?)
停留所に着いて、運転手が「料金払ってくれ」と言う。チケット窓口に行くとお姉さんが「このままルート2まで乗る? だったら、バス乗り換えて。ルート2は二時間コースだよ」と尋ねて来る。相方にそれを伝えると、じゃせっかくだから行こうと。
片方だけのコースだと、一人90ディルハム(1,000円弱かな)。両方行くと、130ディルハム(1,500円くらい?)。ま、観光バスの値段としては妥当だろう。それにこのルート2に乗ると、タンジェでは有名な観光スポットである「ヘラクレスの洞窟」まで行ってくれるのである。
特に今日は予定が一切ない俺達からすれば、丁度良い観光タイムとなる。

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途中で海沿いのエリアでバスが停まる。バスガイド担当のモロッコ人女性が「5分だけ停まりまーす」というので、俺はトイレに行く。彼女に「トイレどこ?」と訊くと「その辺にあるでしょ」と。まったく、ひでえな。トイレの場所も把握してねえのかよ。俺はトイレに行って戻って来たが、5分は過ぎているのに、乗客はまだ全員戻っていない。相方が「なんか、結構いい加減なんじゃない。私もトイレ行って来ようかな」というので、トイレの場所を教える。暫くすると、バスガイドが「貴方の奥さんどこ? もう出発時間よ!」と文句を言う。俺は「トイレだよ」と返すと「電話でもして呼び出してよ」と。このバスガイド、エキゾチックな感じで美人だったのだが、この遣り取りで俺はすっかり嫌いになった(笑)
「彼女はまだなの?」としつこく言うので、「探してくるから待ってろ」と。俺はバスを降りて相方を探しに行く(というか、トイレが混んでいて並んでいるのかなと思っていたのだ)。トイレに行くと、丁度相方が出て来たところだった。相方は足を怪我しているから、急がせたくなかったが、ここでバスに置いていかれると、帰りの足がない。タクシーも捕まる保証がないし。慌てて二人で戻った。
そして、ヘラクレスの洞窟に到着。

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美人だがムカつくバスガイドが「15分停まりまーす」と言った後、俺達に向かって「遅刻しないで」と釘をさす。俺達はとりあえず、ヘラクレスの洞窟を見て、「ふーん、こんなもんか」といった感じでバスに戻る。ヘラクレスの洞窟は、アフリカ大陸の左右逆にしたようなシルエットが有名なのだとか。なんでヘラクレスなのかはよく判らない。

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俺達の所要時間はせいぜい7、8分と言ったところだろう。これなら文句も言われまい。が、15分経ってもまだ戻ってこない乗客がいる。おばあさんが時間オーバーして戻ってきて、バスガイドと談笑している。
相方が「私達には文句言ったくせに、あのおばあさんには文句言わないんだね。アジア人だから差別されたのかな」と怒っていた。相方は、以前メキシコでも差別に遭ったので、こういったのには敏感なのだ。
別に俺はアジア人とモロッコ人のどっちが上とか言うつもりはない。そもそも人種や国籍で上下があろう筈もない。だが、世の中には間違いなくヒエラルキーを作る人は存在する。モロッコ人バスガイドが、俺達に厳しく、おばあさんに優しかったのは人種関係なく、俺達がおばあさんに比べて若かった(またアジア人は若く見られる)からかもしれない。或いは、単に彼女の虫の居所が悪かったのかもしれない。それに、せいぜい待ち合わせ時間で文句を言われたことくらい、海外においては些末な事である。

無事二時間の行程を終えて、俺達はバス停留所に戻って来た。

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ここからリヤド(民宿)まではすぐ近くだ。さすがに昨日歩き回ったから、おおまかな位置関係は判っている。これが安心出来て良いのだ。リヤドに帰る途中で、またまたアルガンオイルを売っている店に遭遇したので、相方が5本くらいまとめて買っていた。

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丁度良い時間になったので、晩御飯に出掛ける事にした。昨日、街を歩き回った時に目星をつけておいた店があるのだ。日本だとファミレスみたいな感じの店なんだけど、パスタやピザなどの俺達が普通に喰いたいものを提供してくれるレストランがあったのだ。

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毎回お約束のオリーブ。モロッコって、どんだけオリーブが大量に取れるのだろうか。

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フランスパンは言うまでもなく、オリーブオイルに浸して、塩胡椒で食べる。スペイン、モロッコに旅行したお蔭で、俺はすっかりオリーブオイル好きになってしまった。もこみちさんにも負ける気がしない(これは嘘)。
相方はパスタが食べたいと言う。そしてもう一品、肉料理を食べようと言う。確かにこれらをシェアすれば俺達には充分だ。相方はメニューに「海老のピルピル」を見つけて、食べたいと言う。まあ、このくらいなら、丁度良い。

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俺達のテーブル担当が、なかなかイケメンの黒人男性だった。相方と食事をしながら、俺は気付いた事を言う。
「そういえばさ、モロッコって、レストランのホール担当に女性っていないよね」
「モロッコの女性は、そういった仕事をしちゃ駄目なんじゃない?」(宗教的な意味で)
「ああ、不特定多数の人相手だからかな」
「じゃないかなー」
この辺りは、俺達はちゃんとした知識をもとに話している訳じゃない。単なる海外での経験で話しているだけだから、間違っているかもしれない。だが、モロッコのレストランでいわゆるウエイトレスを見た事はない。やはり女性は飲食店のホールという仕事はタブーなのかもしれない。
相方はデザートにプリンを食べたいとの事でプリンを注文。前回、モロッコエッサウィラという海の近くの街で食事をした時もプリンが美味しかったと相方は言う。相方にとって、モロッコはプリンが美味しい国という刷り込みがあるのかもしれない。目黒のさんまですな。

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食後にカプチーノを頼むのもお約束となってしまった。酒飲まないからと言って、食後にコーヒーが欲しくなるのも不思議な話ではある。

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食事代は全部で550ディルハムくらいかな(6,000円弱くらい?)。モロッコだとかなり高い部類に入るとは思う。だが、モロッコではアルガンオイルを買ったくらいで、後はこれといった買い物をしていない。それにディルハムは残しておいても仕方ない(ユーロやUSドルと違って使い道がない)。これで良いのだ。
リヤドに戻る途中で、何か喧騒があったので近寄ってみると、小さい子供が馬に乗っていて、周りが大騒ぎしていた。モロッコの七五三みたいなものだろうか。

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リヤドに戻って、バルセロナのデモ/ストライキ情報をネットで調べてみると、どうやら明日は何事もなさそうなのが判った。これで安心して明日はバルセロナへ行ける。