Some Were Born To Sing The Blues

酒好き(2017年秋に断酒を宣言)、音楽好きな中年のおっさんの日々の呟き。趣味はテナーサックスとドラム。2016年冬に50歳目前で札幌に引越し、2017年春にピアノを始めました。

10年間で有給休暇を2日しか使わないという事

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仕事が谷間に入り、ちょっとばかり暇になった。仕方ないので、仕事をやる振りをして、時間を遣り過ごしているのだが、「早く家に帰りたいなあ」と10分に一度は思う有様である。
こういった時に、普段出来ない仕事をやろうとか、さらに仕事の精度を高める何かをやろうとかは一切考えない性質だ。基本的に俺は「頑張る」、「意識高い」とかの言葉が大嫌いである。
眠気を我慢しながら、資料(読まなくても格別良いもの)を読んでいたら、東京の頃の部下だったK君の事を思い出した。Kというのは「キム」さんだ。彼は生粋の韓国人。いわゆる「在日韓国人」ではない。大学までを韓国で過ごし、その後に確か大東文化大学に留学して、そのまま日本で就職したのだったかな。
だから、彼が俺の部下になるまで、彼は日本の企業でしか働いた事がない。ずっと日本にいたので、日本語の読み書きも会話も何一つ不自由がない。仕事は素晴らしく出来た訳じゃないが、堅実にこなしてくれた。少なくとも、同時に俺の部下だったS君(こちらは生粋の日本人)よりは断然仕事が出来た。
K君(イニシャルにする意味がないな)は、日本人と仕事をずっとしていたせいか、仕事での遣りづらさ(日本人と韓国人の考え方の違い、みたいなもの)は一切感じなかった。むしろ、俺とK君は互いに仕事に関しては良いパートナーシップは築けていたと思う。f:id:somewereborntosingtheblues:20190323010529j:plain

ある時、システムの動作確認の期間が俺の個人休暇と見事にぶち当たった(俺の仕事はシステムエンジニア)。現場のお偉いさんから、「君がいなくて、大丈夫かね?」と心配されたのだが、「Kがいますので、そこは大丈夫です。信頼の置ける人間ですから」と太鼓判を押して、俺はバリ島旅行に出掛けた(笑)
当たり前の話だが、システムの動作確認のテストなんかよりも、バリ島旅行のほうが断然大事である。システムなんか俺がいなくても動くが、バリ島旅行は俺が行かないと、俺の旅行が始まらない。旅行は大変楽しかった。バリ島はまた行きたいものである。f:id:somewereborntosingtheblues:20190323010610j:plain

旅行から戻ってきて、K君に遣ってもらった仕事を確認すると、問題は一切なかった。そもそも旅行に行く前から「K君に任せておけば大丈夫だな」と思っていたので、これは想定通りだった。
多分、色々な意味で俺とK君は、目線が一緒というか、同じレベルの考え方をしていたので、その辺りが遣りやすかったのだろうと思う。というのも、二人で組んで仕事をしていて、二人して全く同じ見落としをして失敗をしていたことがあったからだ。無論、それは途中で気付いて、二人で残業をしまくって、なんとか無事に乗り越えたのだけれども。
システム開発の仕事というのは、他の仕事もそうだろうけれども、谷間が多い。滅茶苦茶忙しい週や月があったかと思うと、翌週や翌月は暇で、定時まで何もせずに過ごす、なんて事がよくある。
そんな時、K君は俺によく言った。「忙しい時は滅茶苦茶残業させるんだから、暇な時は定時前に帰らせてくれればいいと思うんですけどねー」俺はそれに同意して「全くだな。何もせずに定時までいても意味ねーよなー」と返した。
今考えると、自分の上司にこんなことを言えるK君もかなり図々しい男だし、それに同調する俺も上司としては、かなり駄目な奴だと思う。
だから、俺達は上手く仕事がやれてたのかも。f:id:somewereborntosingtheblues:20190323010632j:plain

この考え方の真逆だったのが、当時の現場のお偉いさん(部長)である。俺達のクライアントという事になる。彼は俺と同い年で、ギターを趣味としていたし、川崎フロンターレというサッカーチームのサポーターだったので、(仕事以外の)話が合った。ちなみに俺は鹿島アントラーズのサポーターだったから、ライバルサポーター同士だった。当時は、鹿島のほうが川崎よりも圧倒的に強かったので、部長に対してサッカーではデカイ顔が出来たものだが、今は川崎のほうが鹿島よりも強い。トホホである。
その彼の口癖が「仕事だから、やるんだよ」「いる事が仕事なんだ」の二本柱だった。これには全く俺は賛同出来なくて、彼がその言葉を口にする度に非常に不愉快な気分になったものだった(俺らの雇い主だから、仕方ないと言えば仕方ないのだけれども)。
彼の考え方として「どんな理不尽な要求をされても、仕事である以上、それに応えなくてはいけない」が根底にあった。また、仕事の要求はいつどんな時に起きるかも判らないから、その準備をしておく為にも「会社にいる事が必要」と考える人間だった。暇だから定時前に帰りたいなんて俺やK君の考えと相容れる訳がない。当然の話として、酒飲み過ぎて二日酔いで仕事を休む(当時の俺だ)なんてのも論外だった。f:id:somewereborntosingtheblues:20190323010725j:plain

俺と同い年の部長の話で一番驚いたのが、「ここ10年で、有給休暇を使ったのは二回しかない。一回は子供が産まれた時、もう一回は、旅行先で天候悪化で交通機関がストップして、帰れなかった時だけだ」と。俺は唖然とした。この1年で有給休暇を2日しか消費しなかった、という話じゃない。ここ10年で2日しか使っていないというのだ。
彼は独身者じゃない、前述の通り、子供もいて奥さんもいるのだ。にも係らず、10年で2日しかカレンダー以外の休みを取らないというのが信じられなかった。そこまで仕事に忙殺されて、会社に縛られて人生楽しいのだろうか?(大きなお世話だが)と思ったものだ。
当時、俺は零細企業に所属していたとは言え役員だったから、有給休暇はなかった。だが、当然のように休みは取ったし、旅行もよくした。仕事を第一とする人間からすれば、俺のように「仕事を部下に任せて平気で旅行にいけるお前のほうが信じられん」となるのかもしれない。
ただ、これは俺の持論だけれども、仕事には裏切られる可能性があるが、趣味や旅行には裏切られる心配はないぞ、と。
これは後の話だけれども、部長は会社の派閥争い的なものに巻き込まれた形になり、降格人事を喰らって、閑職へと追いやられた。俺の直接的な雇用主ではなくなってしまった。f:id:somewereborntosingtheblues:20190323010803j:plain

勿論、仕事に生きるのがみっともないとか、仕事以外の生き甲斐を探したほうがいいとか、そんな偉そうなことを言うつもりはない。
物凄く単純に、俺とは違う生き方だなあと思うだけの話だ。f:id:somewereborntosingtheblues:20190323010913j:plain

俺が東京を離れる前後に、部長は(当時は既に部長職じゃなくなっていた)その会社を辞めて別の会社に転職した。今も休みを取らずに働いているのだろうか。
K君もとっくに韓国に帰国してしまった。
あの頃、それぞれの考え方で同じ現場で働いていた人間が、三者三様で今は別の場所にいる。それを考えると、人生とは不思議なものだなとつくづく思う。