Some Were Born To Sing The Blues

Saxとジャズ、ピアノとブルース、ドラムとロックが好きなオッサンの日々の呟き

はっきりしやがれ!

仕事が終わり、地下鉄に乗り込む。運が良いと座れる事も結構ある。この日はその運が良い日だった。
出口に近い一番端の席にサラリーマンA氏、そしてその横に俺と座った。いつものように、音楽を聴きながら、ぼんやりとする。
その時だった、俺の斜め前(つまり、サラリーマンA氏の前)に立っている女性に気づいた。年齢は20代半ばから30歳くらいだろうか。尤も、俺の年齢推察は当てにならない。以前、45歳の女性を30代半ばだと思ったし、36歳の女性を28歳くらいだと思ってたから。話がそれた。元に戻す。
若い女性が立っている。それだけの話だ。それだけで済めば。問題は…彼女のお腹が膨らんでいたことだ。彼女の体型は中肉中背。そしてやや膨らんでいるお腹。
お判りだろう。可能性は二つ。妊娠している、或いは単にお腹だけ太っている女性。さて、どちらか。

非常に困ったのが、このお腹の出具合が微妙で、妊婦さんなのか、お腹が出ているだけなのか物凄く判断に困るレベルだったという事だ。
経産婦が見れば一発で「ああ、あれは妊娠してるね(或いは妊娠していない)」とか判るのだと思う。が、あいにく俺は男なのでその辺りが判らない。
俺は次に彼女の持ち物をちらりと見た。バッグらしきものを掛けているようで、肩からストラップが見える。そこに「マタニティカード(って言うのか?)」がないか探した。だが、見つからない。
いよいよ持って、判断出来ない。

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これが彼女が俺の前に立っているのなら話は簡単だ。マタニティカードがあれば、すぐに「席どうぞ」と言える。が、カードがなくても、俺が次の駅で降りますという体で席を立てば彼女が座る事が出来る。
が、彼女は俺の斜め前に立っているので、俺が席を立つと、俺の前に立っている別の乗客が俺がいた席に座ってしまうのが想像出来る。

進退窮まった。二駅ほど悶々としていると、A氏(つまり妊婦かもの女性の前に座っている人)が降りて行った。無事、その女性は席を確保した。良かった、良かった。
そして俺は再確認の意味で彼女の荷物をチラ見した。やはりマタニティカードらしきものを見つける事は出来なかった。彼女はスマホをいじっている。その指先に物凄く派手な付け爪が見えた。妊婦がこんな付け爪するのかなあと思ったが、それは男の考え方だろう、妊娠は病気じゃない(そもそも彼女が妊婦かは不明だ)。

俺が妊婦かもしれない人に席を譲る事に慎重なのは、大昔、やはり妊娠しているかもしれない女性に席を譲った経験から来ている。当時はまだ、ああいったマタニティカードは無かったか、一般的じゃなかったと思う。
俺は、かなりふくよかでお腹も大きかった女性に「席どうぞ」と譲った。その女性は滅茶苦茶遠慮していた。電車を降りてから、「あれ? もしかしてあの人、妊婦じゃなくて、単にすごく太ってただけなのかも?」と思い至った。
妊婦じゃない人に席を譲るというのは、要するに「お前、妊娠してるように見えるくらい、デブだぞ!」と言っているのと同じだ。相手の女性だって、俺が悪意を持って行動したとは思っていないだろう。だが、ある意味の辱めを受けたのは間違いない。
勿論、この場合も彼女が妊婦なのか否かは確かめようがないけれども。

以前もやはり目の前に妊婦さんに立たれた事があった。この場合もやはりマタニティカードが見えなかった。だが、お腹の膨らみ具合が前述の女性とは違って「これは妊娠だよな、間違いなく」というものだった。が、カードが見えなかったから、保険を掛けて、普通に次の駅で降りる振り(実際降りたけど)をして、席を譲る形を取った。その女性がバッグを膝に乗せた時にマタニティカードが見えた。
なんだよ! 最初から見える位置にカードつけとけよ、そしたら一駅待たずに席譲れたじゃねーかよ! と俺は当時は思ったんだけど、今になるとなんとなく判った気がする。
要するに、電車に乗って「席譲ってくださーい」というつもりであのカードを身に付けている訳じゃなく(だから座っている人からは見えない場所にカードを身に付けている)、何かあった時に備えてあのカードを携帯しているのだろう、と。
例えば、公共の場で体調不良になって周りの人に助けを求める時、普通に「この人気分が悪いのかな」と思われるよりも「あ、この人、妊婦だ。だとすると、もっと緊急性高い可能性あるかも」と認識される事が重要というか。

これは【男】である俺の考えだから、実際は違うのかもしれない。

一度、妊娠しているかも(しかし単に太っているだけかも)という女性に席を譲って以来、どうも俺は妊婦さん(かも)に席を譲る事に神経質になっている。
妊婦さんに席を譲るのは全然構わない。しかし、太っている女性(或いはお腹が出ているだけの女性)に席を譲ったら、非常に失礼だよなあというリスクが頭に常時あるのだ。

困ったもんだぜ。そもそも、俺がそろそろ席を譲られても全然問題ない年齢のような気がするんだけど。あと15年くらいして、まだ生きていたら、俺はこんな爺様になりたいという事で(脈絡がない)、本日の記事はおしまい。

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