Some Were Born To Sing The Blues

酒好き(2017年秋に断酒を宣言)、音楽好きな中年のおっさんの日々の呟き。趣味はテナーサックスとドラム。2016年冬に50歳目前で札幌に引越し、2017年春にピアノを始めました。

バンドをクビになりました(人生2回目)@札幌

ちょっと前に、札幌で初めてのバンド結成をした話を書いた。

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そして昨日、バンドの発起人であるギターのおじいさん(65歳)から、宣告された。
「貴方達は、クビです」
また、バンドをクビになりました(笑) 東京にいた頃もバンドをクビになった経験はある。

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さて、では顛末を書いていこう。

登場人物
おじいさん(仮名、65歳):ギター担当。バンドの発起人
可奈ちゃん(仮名):ヴォーカル担当。力強い低音ヴォイスが魅力。
先生(仮名):ベース担当。バンドの要的な役割を果たす。
俺:ドラム担当。

すすきののミスド初顔合わせをした。やる曲はとりあえず山口百恵を3曲、アンルイスを1曲と決まった。決まったというか、おじいさんが勝手に提示してきて、俺達には拒否権はなかった。
ギターのおじいさんは「ボクは元プロのジャズベーシストでした」と自己紹介した。俺は「やべ、元プロのジャズメンかよ。となると、ギター相当上手いな。俺で大丈夫かな」と不安になった。

そして初スタジオの日取りを決めた。その後、おじいさんからメールが来た。「ドラムはヴォーカルやギターより小さい音で叩いて下さい」と書かれていた。そんな事を過去に言われた事がないので戸惑ったが、まあ仕方ない。「了解しました」と返した。

初スタジオ。最初はおじいさんに言われた「音量おとなしめ」を意識して叩いていたけど、練習が過ぎるにつれ、段々音量セーブを意識しなくなった。それにおじいさんも何も言わなかったから、この音量で丁度良いのだ理解していた。
ベースの先生が的確な演奏をしてくれるので非常にこちらは叩きやすかった。ドラムの一番のパートナーはベースだ。俺にとっては非常に有難いベーシストだ。
ヴォーカルの可奈ちゃんは想像を上回る良さだった。よく女性ヴォーカルにありがちな、カラオケ好き女性とは一線を画す、低音がパンチの効いたセクシーヴォイス。
一番驚いたのが、ギターのおじいさんだった。え、元プロのジャズベーシストじゃなかったの? そう突っ込みたくなるようなギターだった。上手下手で言うと、下手な部類だった。彼が「元プロジャズベーシストです」と言わなければ気にならなかった。俺だって人の事言えるドラマーじゃない。ドラムの腕は最下層だ。が、俺もギターを弾いていたから、ギターの上手下手は判る。
正直、元プロのジャズメンのギターの腕前じゃなかったのは確かだ。

次のスタジオの日程を決めた。ギターのおじいさんからメールが来た。なんと一ヶ月単位でレパートリーを増やしましょうと書いてあり、20数曲、やる予定の曲が書かれていた。
この時点で俺は、ん? となった。そもそもバンドのレパートリーはメンバー皆で決めるべきである。勿論、俺達がギャラを貰って依頼されてやるプロなら従うべきだが、俺達はそうじゃない。趣味のバンドだ。だからレパートリーをリーダー一人が独断で決めて良い筈がない。
また、何故かやる予定の曲にビートルズの「SOMETHING」と「COME TOGETHER」があった。これさ、どう考えても女性ヴォーカルに適してないだろ? 自分がやりたいだけじゃんか。

2回目のスタジオの前日にギターのおじいさんからまたメールが来た。
「ドラムの音量はヴォーカルやギターより少しだけ落として貰わないと困ります。またフィルイン入れた後にドラムのリズムが遅れたので注意して下さい」
正直、滅茶苦茶ムカッときた。そもそも前回のスタジオの時、お前音量の事は何も言わなかったじゃねーか。俺はドラムが上手くない。だから演奏のミスや駄目なところを指摘して貰っても全然構わない。むしろ指摘して貰ってありがたいとすら思う。
だが、だ。演奏に関する指摘やリクエストはスタジオでしてくれよ。その為のスタジオ練習だろ。メールで書いてくるなんて気分良くない。それに音量の問題は俺だけじゃなく、ヴォーカルやギターとの相対的な問題だ。スタジオで確認しなきゃ、良いのか悪いのか、それすらも判断しようがない。
頭来たので「そういった事はスタジオで指摘してくれ」という意味の事を非常に丁寧な言葉で返した。この時、あまりにムカついたので、もうこのバンドは辞めようと思っていた。ベースの先生と可奈ちゃんとは続けたかったが、こんなやり方じゃ楽しくやれないしね。

そして金曜日に2回目のスタジオ練習。
俺はちょっと思うところあって、ギターのおじいさんに「ドラムの音量はこんなもんですが、ギターやボーカルと比べてどうですか?」と突っ込んだ。ベースの先生に「おじいさんが俺のドラムをギター、ヴォーカルよりも落としてくれと言ってるんで、確認してるんですが、どうですか?」
すると、ベースの先生が「いや、ドラムの音を落とせって、ドラム基盤で音量決めるべきでしょ」と。一曲終わった後に俺は可奈ちゃんに訊く。
「ドラムの音量どうでした? ヴォーカル歌いづらくなかったですか」「いえ、全然。大丈夫でしたよー」とは可奈ちゃんの弁。

山口百恵の「赤い絆」という曲をやる。イントロでベースとギターが全然合わない。ドラムはここはフィルインを入れるパターンなので、あまり重要じゃない。あくまでもメインはギターとベース。が、合わない。というか、明らかにギターが間違えている。ギターのフレーズがずれてるとかならまだいいんだけど、全然違うコードを弾いている。
ベースの先生も顔を顰めている。俺も「ギター、一体全体何弾いてんだろ?」と不思議で仕方なかった。どちらが間違えているにしろ、合っていなかったら「あれ、合ってないよね?」と思うのが普通だ。が、ギターのおじいさんは平気な顔をしている。
ベースの先生が「あの、何弾いてます?」と確認。おじいさん「いや、ここはFmのコードが…」「いや、それは違うでしょ」という遣り取りが。
元プロのジャズメンなのに、他の楽器と音が合ってないのに平気だったのが一番の衝撃だった。

そして練習が終わり、バンドミーティングをした。
実は俺はヴォーカルの可奈ちゃんとLINEで事前に遣り取りをしていた。可奈ちゃんは「正直、ビートルズとかはあんまり気乗りしないし、『ルビーの指輪』もやりたくない」と言っていた。俺は歌物バンドは基本ヴォーカルがやりたい曲をやるべきだと思っている。だから可奈ちゃんがやりたくない曲はやるべきじゃないと思っていた。
「大丈夫。可奈ちゃんがやりたくないなら、次回のスタジオの時にレパートリー変更するように話しましょう」とメッセージを返していた。

「次は何の曲をしましょうか」とおじいさんが言うので、こちらも考えている事を言う。
ルビーの指輪はやめませんか。可奈ちゃんのヴォーカルに合うとは思えませんので」
「可奈さん、どうですか。ルビー、やりたくないですか?」
「すいません。ルビーはあんまり…」
「じゃ、止めましょうか」
「あと、ビートルズもちょっと合うとは思えないんですけど」
「可奈さん、ビートルズはやりたくない?」
「はい、すみません。あんまりやりたい感じでは…」

バンドはこの時、コーラス、サイドギターを募集していたのだけれども、ベースの先生がおじいさんに問う。
サイドギターよりも、キーボードあったほうがバンドの音は広がりませんか?」
「いや、ちゃんと弾けない人入れても仕方ないし」
(一番、弾けてないのは、お前だよ!)
と、ベースの先生とおじいさんがバンドの構成について話するのだが、噛みあわない。ベースの先生が話しているのは、あくまでもバンドのメンバー構成の事。ギター2本よりもキーボードのほうが楽曲的にもいいんじゃない? ギターのおじいさんは「下手な奴いれても駄目」と。会話が成立していない。


俺はバンドを抜けようかと思っていたけど、ベースの先生がいい感じでリーダーシップを取ってくれたので、続けようと思った。
土曜日に可奈ちゃんからLINEのメッセージが来て「ビートルズルビーの指輪やらなくなって助かりました」とあったので、「実はバンド抜けようかと思っていたけど、先生がリーダーになってくれて気持ち上向いたから続けるよ」と返した。

そして、日曜昼に可奈ちゃんからメッセが届いた。
「こんなの、出してますよ!」
見ると、バンド募集サイトにギターのおじいさんがメンバー募集をしていた。
山口百恵中森明菜等の曲をやります。当方リードギター。ヴォーカル、ベース、ドラム、サイドギター、コーラス募集」
これは、俺達が応募した時と全く同じ内容。ということは、当然意味は判る。おじいさんは俺達を切るということだ。
要するに、2回目のスタジオで俺達がおじいさんの言う事を聴かず、謀反を起こしたのが気に食わないという事なんだろう。

慌てて、可奈ちゃん、先生、俺の3人で集まる。この時、選択肢は二つしかない。
バンド解散か、新しいギターを探して俺達は続けるか。

居酒屋で酒を呑みながら話し合う。無論、おじいさんへの愚痴や悪口もありだ。先生は可奈ちゃんのボーカルにベタ惚れなので続けたいのは明白だった。勿論、俺も先生と可奈ちゃんと一緒にバンドをやりたい。
酔っ払ったのか、先生が俺に言った。
「この人、ドラムは下手だけどさー、マジいい奴だからねー。一緒にやりたいんだよねー」
おいこら、誉めてんのか、けなしてんのか(笑)

可奈ちゃんの知り合いのギタリストがいるとの事で、じゃあその人をギターに加えて続けましょうという事で話は決まった。
面倒くさいのは3回目のスタジオの予約を既に取っていたという事だった。

が、ギターのおじいさんからメールが来た。
「スタジオはキャンセルしました。話があるので、来てください。その時に渡した譜面返して下さい」
譜面てさ、コピーだよ。原本じゃないんだよ。それ返せって、せこいなー。

そして金曜日。スタジオの休憩所に俺とベースの先生で行った。可奈ちゃんは来なくて良いと言っておいた。おじいさんが毒吐きそうだったから。可奈ちゃんに嫌な思いをさせたくなかったからね。

ソファに座って、CDや譜面をまず返した(これらはおじいさんが勝手に寄越したものなんだよね。それを返せってなんだろうな)。
「あれ、可奈さんは?」
「彼女は体調が悪いとの事で今日は欠席です。で、なんか話あるって事らしいですけど、なんでしょうか」
俺は早く話を済ませたいので切り出す。

ここから、想定の斜め上をいくおじいさんの会話が始まった。

「あのね、ボク、格闘技やってたんですよ。だからね、ふざけた態度取ると…(お前ら、ボコボコにするよ!)」
俺と先生は顔を見合わせた。この人何言ってんだろ。これが10代の男の子の発言なら、まあ粋がるのも判る。だけど、60過ぎた人の発言だろうか?

俺はあまりの馬鹿馬鹿しさに笑い出しそうになった。
「で、お話というのは?」
すると、おじいさんが言った。

「貴方達は、クビです!」

あははははは。俺は笑い出したくなった。クビはお前だよ、ジジイ。でも、これで後腐れなくていいかな。


そして次に先生が標的になった。
「先生はボクより10も年下でしょ。なのになんでタメ口なの? ふざけないで下さい」
ここで先生が?マークを100個くらい頭の上に浮かべた。俺もそうだ。先生は一度もおじいさんにタメ口を使った事はない。先生はしごくまっとうな社会人だから、その辺りは弁えている。多分、俺が思うにバンドの編成や曲の事で意見を言った事が「タメ口」に変換されたんだろう。

そこから、おじいさんは色々文句を言い出しそうになったので、俺が遮った。
「いや、もうお話終わりならこれで失礼します」

すると、おじいさん、さらに続けた。
「可奈さんは譜面も返さないし」
しつけーな。コピーだろ。原本じゃねーだろ。

俺は財布から千円札を取り出し、おじいさんに渡した。
「じゃ、これでいいですよね。可奈さんは貴方に譜面を返す義務はなくなった、という事でよろしいですね」
この時、おじいさんの目が嬉しそうだったのを俺は忘れない。譜面のコピーなんて、10枚で100円だ。千円じゃ多すぎる。
でも平気でそれを受け取るんだな、このじいさまは。

音楽をやる人間でクレイジーな奴は結構いる。
だが、ここまで「キチガイ」な人は初めてだった。

あまりにもありえない経験をした。
でも、俺は可奈ちゃん、先生、そして新ギタリスト候補の人とバンドを続けていける。だから、それでいいや。
新ギタリスト候補の人は、趣味が合わなくて一緒にやれないかもしれない。でも、いい。
無理は良くない。

少なくとも、俺は札幌で可奈ちゃんという最高のシンガーと先生という信頼出来るベーシストと出遭えた。
これ以上、何を望めるだろう。

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