アマチュアミュージシャンの最大にして最高の夢は何かと問うたら、100人中100人がこう答えるだろう。
「プロになって売れる事」
無論、アマミュージシャン全員がプロを夢見ている訳ではあるまい。俺みたいに最初からプロなんか関係ないアマチュア純度120%の世界で生きているアマもいる。また、若い頃はプロを目指していたが、今は諦めてアマという人もいるだろう。
では、プロになる以外の最大の夢と言ったらなんだろう。俺は「自宅にスタジオを作る」じゃないかと思っている。
よく昔バンド仲間と「宝くじ当たったら、家の地下にスタジオ作る。そしたら、みんなでそこで練習やろうぜ」と話をしたものだが、宝くじは一向に当たらず、バンドは解散し、自分は歳を喰うだけという悲惨な有様である。まあ、自宅にスタジオを作るなんて、ある種の都市伝説に近いものがある。
と思っていたのだ、ここ数年前まで。が、身近にそれを実現した人がいた。
先週末、音楽教室仲間のAさんに自宅に招かれて遊びに行った。Aさんは都内23区に一戸建てを建てたのみならず、なんと自宅に音楽スタジオを作ってしまった人である。都内に一戸建てを建てられる収入、財産がある事も羨ましいが、それにプラスして自宅スタジオまで作れてしまうのも羨ましい。俺は一生かけても持ち家、持ちマンションなんて夢のまた夢なんで、素直にAさんすげーなーと思うばかりである。
因みにAさんが自宅スタジオを作れた要素の一つに(収入以外に)、奥さんとは音楽教室を通じて知り合った、という点がある。つまり奥さんも楽器演奏をするから、スタジオを作る事に関して理解があるということだ。
楽器演奏を嗜まない奥さんだったら「スタジオ作るよりも、子供部屋でも作ってよ」というところだろう。
約束の時間にAさん宅にお邪魔する。玄関を入り、奥の部屋へ通される。部屋へ入ると、見た目は普通の8畳程度のリビングっぽい部屋。が、ドアがまず違う。音楽スタジオにあるドアと同じように分厚く重い。
そして窓の外はなんと3重サッシ。Aさんに防音は大丈夫なんですかと問うと、絶対に漏れないとの事。そうとう分厚くしたらしい。
部屋の端にはアップライトピアノがある。奥さんの花嫁道具だとか…
そして、その対格の奥にはドラムセットがある。そういえば思い出した。俺の高校の時のクラスメートに音楽一家のやつがいて、そいつの自宅にもピアノとドラムセットがおいてあったなあ。でも、そいつの家は群馬の田舎の一軒家だからねえ。Aさんとは地理的状況が違う。
既に音楽教室仲間のBさん(ソプラノサックス持参)、Cさん(バリトンサックス持参)とメンバーが揃っている。
俺は、ギブソンレスポールとドラムスティックを持参した。Aさんはテナーサックスだ。
スタジオには、パソコンもおいてあるので、これでカラオケCDを流せる。まずは「WATERMELONMAN」を流す。皆はサックスでそれぞれテーマを吹く。俺はギターでコード進行役だ。
テーマが終わると、今度は12小節単位でソロ合戦。俺もギターでソロをやる。しかし、管楽器が中心だとキーがFばっかりなんだよな(笑)
で、それを2,3回やったらギターに飽きたので今度はドラムをたたかせて貰う。いやあ、見た目普通の家のリビングなんだけどね。ドラム叩けるのが素晴らしい。
そうやって何度かセッションを繰り返す。
「WATERMELONMAN」に飽きたので、次は「バグズ・グルーブ」だ。ってゆーか、これもKEY=Fのバリバリのブルース進行なんだが(笑)
そうやって、セッションしたりお喋りしたりして3時間ほど過ごす。夕方が近くなったので、そろそろということでお暇する。
レンタルスタジオに行ってセッションなら、何度かしたことある。が、個人の家でセッションは生まれて初めて。きっと最初で最後だろう。Aさんはまた来て下さいと言っていたが、奥さんへの迷惑を考えると中々、そうもいかん。Aさん宅にはまだ1歳半の赤ちゃんもいるし。逆にあと5年くらいしたら、また遊びにいけるか。まあ、その頃まで俺がこの街に住んでる保証もないのだが…
最後に蛇足だが、自宅にスタジオ作ると、大体400ほど余計にかかるらしい。大人の趣味を実践すると、やけに金がかかるものなんだな…